何かと話題や議論の多いiPhone 3Gであるが、懐疑的な声としてよく取り上げられるのが、「片手で操作がしにくいのでは」という意見である。それは本当だろうか。
結論からいえば、片手操作ができない・難しいというのは誤解である。筆者はこの2週間、iPhone 3Gをメインのケータイとして使い続けているが、普通に片手で操作をしている。
もちろん、すべてのシーンで片手操作が快適とは言わない。細かなスクロール操作やピンチを多用するアプリケーションは、両手の方が使いやすい。だが、少なくとも、電話やメール、Safariを使ったWebブラウジングなど多くのシーンでは、「片手で持って親指1本で操作する」ことは可能であり、使いにくさを感じたり、違和感を覚えることはなかった。iPhone 3GのUIは、“両手で操作した方が使いやすいシーンがある”というだけで、“片手では操作ができない/しにくい”わけではないのだ。
これは筆者の手が大きいからというわけでもない。筆者の手は男性の標準的な大きさであるし、数人の女性にもiPhone 3Gの片手操作を試してもらったが、「(横幅のある)見た目と違って、片手できちんと使える」と高評価だった。
iPhone 3Gが片手で問題なく使える理由は、いくつかある。
まず、本体の側面が丸みを帯びて、“手のひらに収まりやすい”デザインになったことの影響は大きい。先代iPhoneと使い比べてみると、片手持ちをしたときに、iPhone 3Gでは明らかに親指が動かしやすくなっているのだ。女性の手でも横幅をあまり感じさせずに操作できるのは、このデザインの妙があるだろう。
UIの面でも、片手操作をしやすくする配慮が随所にある。
例えば「電話」では、電話番号を直接打ちこむキーパッドの数字ボタンが、とにかく大きい。ボタンあたりの単位面積が一般的なケータイの倍程度あるので、微妙なコントロールが難しい片手で持ったときにも、無理なく電話番号を入力できるのだ。電話帳や履歴の利用も同様で、項目1つ1つを大きく表示し、動きのムラを巧みに抑えることで、片手操作がしやすいようになっている。
一方、フルブラウザのSafariでは、ダブルタップによる拡大・縮小と、サイト上の段組や表示にあわせた拡大の自動調節機能が、片手操作をしやすくしている。
iPhone 3Gでの拡大・縮小というと、ピンチを使った操作が印象的であるが、実は多くのシーンで「見たいところをダブルタップする」だけで表示の拡大ができる。再びダブルタップをすれば、元のサイズに戻る。さらにSafariでの拡大時には、ダブルタップした場所の段組や表示を認識し、最適なサイズに自動調整してくれる。これによりニュースサイトやブログ、掲示板など文字中心のサイトであれば、ダブルタップとドラッグやフリックによるスクロールという“一本指”の操作でまかなえるのだ。
iPhone 3Gを上手に使いこなすコツは、「片手で操作できるシーン」と「両手で操作した方が使いやすいシーン」をうまく見極めて、それぞれに応じて柔軟に手を使い分けることだ。新たに搭載された日本語入力モード「KANA」のように積極的に片手で操作した方が使いやすいものもあるので、「iPhone 3Gは両手で操作するもの」といった先入観は持たない方がいいだろう。
2週間にわたるiPhone 3Gとの生活。筆者がそこで得たものをひと言で評せば、それは「洗練された自由」である。いつでも・どこでもインターネットやデジタルコンテンツを使うことができ、しかも、それがとても使いやすくて楽しい。機能という「できること」だけ見れば、今までの携帯電話やスマートフォンと大差ないかもしれない。しかし、自由度の高さでは従来の携帯電話を大きく上まわり、UIの洗練では既存のスマートフォンを凌駕している。洗練された自由を手のひらに納められることこそが、iPhone 3Gを持ち歩く最大のメリットである。
インターネットの利用や連携は、その自由が特に感じられる部分だ。
例えば、Webブラウザの「Safari」は、現在もっとも優れたフルブラウザの1つであり、その表現力の高さと描画速度の速さは特筆すべきものがある。ニュースサイトやブログを見るといった使い方なら、PC用のブラウザよりも使い勝手がいいと思う。
「メール」はPOPとIMAP4のインターネットメールがそのまま使える上に、MobileMeではMac/PCとの自動シンクロやプッシュメールにも対応する。受信メールのフィルタ分けや選択削除ができないなど細かな機能面に不満はあったが、一方で、添付ファイルがPC並みに扱いやすいといったメリットがある。さらにMobileMeならば、メールの既読情報や返信・送信、削除などがiPhone 3GとMac/PC側で完全に同期するので、メールの一元管理がしやすい。
「カレンダー」や「マップ」「天気」といった個々のアプリケーションも1つ1つが洗練されており、しかもユーザーに難しい操作をさせることなく、インターネットと連携するメリットを引き出している。
一方、デジタルコンテンツの利用などエンターテインメントの分野でも、iPhone 3Gの自由度は高い。
そのコアになるのは「iPod」であり、ここは文字どおり“フルサイズのiPod機能”がiPhone 3Gの中に入っている。メディアプレーヤーとしての性能や使い勝手のよさ、さらにPC/Mac用の音楽管理ソフトウェア(iTunes)の使いやすさと連携のスムーズさなど、すべてがiPodクオリティである。iPhone 3GはiPod touch同様、動画再生能力にも優れているので、実力としては2時間ものの映画視聴にも適しているだろう。アメリカでスタートしているiTunes ビデオレンタルが日本でも登場すれば、音楽配信だけでなく、映像配信のビジネスも活性化させられるだけのポテンシャルがある。
映像分野ではYouTubeの存在も忘れてはならない。携帯電話向けのYouTubeは、すでにドコモのハイエンドモデルが対応しているが、ここでも使い勝手のよさでiPhone 3Gのそれには特筆すべきものがある。動画コンテンツのリスト表示や検索、ブックマークなど利用時の操作性に優れており、無線LANと3Gエリアのそれぞれの通信環境に応じて画質を調整。動画再生までの待ち時間はそれほど長くなく、見ていてストレスは感じない。3Gエリアでも十分な画質とスピードで視聴できる。
iPhone 3Gの弱点として日本のワンセグに対応していないことがよく挙げられるが、iPhone 3GにはYouTubeがある。外出時のちょっとした暇つぶしならば、視聴スタイルの自由度が高いYouTubeの方が使い勝手がよいと思う。
iPhone 3Gはインターネットやデジタルコンテンツとの親和性が高く、使っていると伸び伸びとした印象を常に受ける。すでにネット利用のリテラシーが高い人だけでなく、多くの一般ユーザーが「モバイルでネットを自由に使う」入り口として、iPhone 3Gは最適なパートナーといえる。
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