コンパクトデジカメで動画が撮れるのは今や当たり前だが、動画撮影ができるデジタル一眼レフはこれまでなかった。これらの内部には、光をファインダーに導くミラーがあり、シャッターを切った瞬間にしか撮像素子に光を当てられないことや、デジタル一眼レフ用の撮像素子がそもそも動画に対応していないことなどが、従来機で動画撮影ができない主な理由だった。
だが最近では、内部のミラーを上に上げたままにして、リアルタイムの映像を液晶表示する「ライブビュー」機能に対応したデジタル一眼レフが増えてきた。ライブビューは、静止画を撮る際に構図を決めたり、正確なピントを合わせやすくするための機能だが、ライブビューを応用すれば動画撮影ができるはず。というのは、誰もが思い付く発想だろう。ライブビューが進化し、動画対応のデジタル一眼が登場するのは、時間の問題と思われた。
そして、それを初めて実現したのがニコンの中級機「D90」だ。本当のことを言うと、動画はあくまでD90の付加機能のひとつにすぎず、基本は静止画を撮るためのカメラである。現に、300ページ以上ある分厚い取扱説明書のうち、動画の解説はわずか3ページしか割かれていない。
とはいえ、話題性や斬新さで、動画撮影モードに注目が集まっているのも確か。それに、実際に使ってみると、デジタル一眼レフによる動画撮影は思いのほか楽しい。前置きはこれくらいにして、さっそくD90の動画モードをチェックしてみよう。
D90の動画撮影機能は「Dムービー」と呼ばれ、ライブビューの応用機能として提供される。動画はAVIファイルで保存され(映像コーデックはMotion-JPEG)、最大サイズである1280×720ピクセルの場合、最長5分の連続撮影が行える。音声は、内蔵マイクによるモノラル録音となる。
使い方は、まず背面のLVボタンを押し、液晶モニターにライブビューを表示する。その状態でシャッターボタンを押せば、コントラスト検出AFによってピントが合い、静止画が撮れる。シャッターボタンの代わりに、背面のOKボタンを押せば、動画撮影がスタートする。撮影中は、録画マークや残り時間が表示され、液晶画面を見ながら構図を決められる。そして、もう一度OKボタンを押すと、録画がストップする。
操作自体は特に難しくないが、動画機能にはいくつかの制約がある。そのひとつはAF。撮る前にシャッターボタンを半押ししてピントを合わせることは可能だが、動画記録中にAFは作動しない。途中でピント調整をするには、フォーカスリングを回し、マニュアルで操作する必要がある。
望遠レンズなど被写界深度が浅いレンズを使ったり、動きの速い被写体を撮る際に、マニュアルフォーカスでピントを合わせるのは非常に難しい。撮影中にピント位置を調整したいなら、あらかじめ被写体までの距離を測っておき、フォーカスリングの回転位置または目盛りを見ながら操作するのが現実的だろう。あるいは、被写界深度が深い広角系のレンズを使ってパンフォーカスで撮るのもいい。
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