パナソニックは9月24日、フルハイビジョン解像度を持つ3Dシアターシステムを公開した。開発コンセプトが「3D映画を画質劣化なしで家庭に持ち込む」というように、フルハイビジョンの3D映像を楽しめるのが特徴だ。30日に幕張メッセで開幕する「CEATEC JAPAN 2008」で参考展示とデモンストレーションを行う予定だが、一足先に見せてもらった。
今回のシステムは、専用のBDプレーヤーと103V型のプラズマディスプレイ、アクティブ液晶シャッター方式の3Dメガネで構成されている。左目用/右目用のフレームを交互に表示し、メガネの液晶シャッターと同期させて視聴する“フレームシーケンシャル表示方式”を採用。手法としてはとくに目新しいものではない。
技術的なポイントは、まずBDプレーヤーがフルハイビジョン映像×2チャンネルを同時に送り出せること。同社の半導体ユニフィエプラットフォームをベースに、2チャンネルのリアルタイムデコードおよび再生技術を開発したという。またプラズマディスプレイは、「パネルに調整を加え、駆動系は新規に開発した」(PDPデバイスビジネスユニット技術開発推進担当の笠原光弘参事)というもので、プラズマならではの動画性能を生かし、毎秒120フレーム表示が可能になっている。
つまり、右目用と左目用に2チャンネルの映像をフレーム単位で交互に表示し、液晶シャッターと連動させれば、フルハイビジョン&フルフレームの3D映像を視聴できる。これが“画質劣化なし”の根拠だ。
パナソニック・高画質高音質開発センターの宮井宏所長は、「映画を2Dと3Dで同時上映すると、3Dのほうが3倍の売上げを記録するといったデータもあり、ハリウッドの各映画スタジオは3D映画の制作に積極的に取り組んでいる」と話す。例えば2005年に「チキン・リトル」で大成功を収めたディズニーはすべてのアニメーションを3D化する計画を明らかにしているほか、過去の2D作品の3D化も進めているという。また昨年の「ベオウルフ/呪われし勇者」のように、実写とCGを組み合わせた3D映画作りも広がりつつある。
しかし、高品位コンテンツとしての3D映画需要が高まる一方、「家庭向けとして開発された既存の3Dシステムでは、縦方向あるいは横方向の解像度が(フルハイビジョンの)半分になってしまう」(宮井氏)のがネックだった。既にDLPリアプロジェクターや特殊な偏光フィルムを用いた液晶テレビといった3D表示機器が存在するが、例えばライン・バイ・ライン方式では、右目用と左目用の映像をインタレースで同時に表示するため、縦方向の解像度が半分。隣り合う画素ごとに左右の情報を千鳥配置するチェッカーサンプリング方式も同様に解像度は大きく落ちるという。いずれにしても1チャンネルの情報量で2チャンネル分の表示を行う以上、画質の低下は免れない。
対してパナソニックが開発したシステムなら、前述のようにフルハイビジョン解像度のうえ、左右の目に入る情報はそれぞれ毎秒60コマのフルフレーム。1フレームあたりの表示時間は半分になるものの、解像度とフレームレートに関しては、通常のフルハイビジョン映像と同等だ。
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