ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)より、高音質再生を実現する新しいCD「Blu-spec CD」が発表された(→発表記事)。SACDのように専用プレーヤーを必要とせず、一般的なCDプレーヤーでの再生できる“普通”のCDでありながら、Blu-rayディスクに活用されるいくつかの技術を反映させることで、再生時のジッターを大幅に低減。これまでのCDとは格段の高音質を実現しているという。
先日、技術説明会を兼ねた試聴会が、都内のSME乃木坂スタジオで催された。同時にサンプル盤も入手することができたので、Blu-spec CDの実体とそのサウンドについて迫ってみよう。
まずは、Blu-spec CDの技術的なアドバンテージから紹介しよう。
Blu-spec CDは、一般的なCDとまったく同じCDDA規格に準拠しているため、一般的なCDプレーヤーで再生することができる。ただしその製造過程やマテリアルに工夫を凝らすことで、CDの持つ実力を最大限に発揮、高い音質を獲得しているという。こういった手段を用いた製品としては、すでにSHM-CDやHQCDなどが存在しており、「CDでありながら高音質」という基本は前出の2者と同じだ。ではどういった違いやアドバンテージがあるのだろう。それはズバリ、スタンパーのカッティングから高度な技術力を反映している点だ。
CDなどの光ディスク系メディアは、マスター音源からスタンパーと呼ばれる型(かた)を作成し、それをポリカーボネートの円盤にポンと型押したのち、反射面を塗布して製品が完成する。実はこの光ディスクの製造工程において、スタンパーの精度とポリカーボネートの質が最終的なクオリティーを大きく左右する。
Blu-spec CDでは、Blu-ray Discの製造で培った「Blue Laser Diode」(ブルー レーザー ダイオード)カッティングにより極微細加工を実現。マスター音源の信号をゆがみや狂いを抑えつつ高精度に反映する。同時にポリカーボネートもBlu-ray Discとおなじ高分子素材を採用することで、スタンパーに刻まれたピットを正確に転写できるという。
もちろんSHM-CDなどでもスタンパーの精度向上は図られているが、ここまでのこだわりを持って製造されているのはBlu-spec CDがはじめて。CDと同じサイズで約35倍のデータ量を持つBlu-ray Discを手がけるSMEならではのアドバンテージだろう。
ちなみにラインアップに関しては、現在のところ12月24日に第1弾として60タイトル、1月に第2弾として20タイトルの発売が決定している。それらはクラシックやジャズ、ロックなど名盤のリプレースが中心となっているが、今後は新譜に対しても積極的に展開する計画もあるという。
またBlu-spec CDはSMEだけで使用する規格とはせず、他レーベルに対しても広く採用をアピールしていくとのこと。まだ具体的に採用を決定したレーベルは公表されていないが、高音質ディスクがメーカーの隔たりなく広がってくれるのは、いち音楽ファンとしてうれしい限りだ。
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