テレビ放送にHD時代が到来し、デジタルAV機器におけるHDMI端子の標準装備は当たり前となりつつある。規格も互換性を維持しつつ改訂が進められ、最新バージョンの1.3aでは解像度や色深度の引き上げが行われている。
HDMIは、映像や音声以外の信号にも対応する。これを利用するのが、HDMI 1.2aで定義された「Consumer Electronics Control」(CEC)で、テレビやレコーダーなどの機器間で制御信号をやり取りすることにより、お互いを操作する。テレビからレコーダーの録画予約を行ったり、レコーダーの電源をONにするとテレビもあわせてONにされたりといった機能は、このCECによって実現されている。
CECを利用した機器間制御機能は、すでに多くのメーカーで採用されている。パナソニックの「ビエラリンク」、ソニーの「ブラビアリンク」、東芝の「レグザリンク」などがそれだ。この機能に対応したAV機器であれば、1つのリモコンでいろいろな操作を行うことができる。
ただし、CECには「方言」がある。CECでは基本的な命令を定めているが、独自の拡張を行う余地もあるからだ。そのため接続性が完全に保証されるわけではなく、同じメーカーの「×××リンク」に対応した機種でないかぎり、できない操作もあることになる(各社とも「CECに対応した他社製品との間で操作できることもあるが動作は保証しない」とのスタンス)。リンク機能はユーザに利便性をもたらす反面、リンクにこだわると特定のメーカーに囲い込まれてしまうデメリットも生じるのだ。
一方、テレビやビデオレコーダーを主力商品としないメーカーは、複数のリンク機能をサポートすることで「方言問題」に対処しようとしている。6社のCECに対応したヤマハの小型サウンドプロジェクター「YSP-600」、ビクターの学習リモコン「RM-A815 / A615」が好例だ。メーカーが囲い込みを続けるかぎり、このような「マルチリンガル」な製品も増加することだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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