International CES開幕前夜に行われるプレスデーの基調講演。長らくこの講演でスピーカーを務めていたMicrosoftのビル・ゲイツ氏が第一線を退いたことから、今回は同社 CEOのスティーブ・バルマー氏が登場することになった(→2008 International CES:ゲイツ氏、“本当に”最後のCES基調講演 )。
折しも数十年に一度とも言われる不況下であり、これはIT業界にとっても無関係なものではない。その中で、バルマー氏はどのようなビジョンを示そうというのか。スピーカーの交代で人出が鈍ることも予想されたが、会場となったVenetian Hotelの大ホールは多くの聴衆で埋め尽くされた。
「私にとっては初めてのInternational CESのキーノート。色々な人からメッセージをもらったよ」
バルマー氏はビル・ゲイツ氏やYahoo!のジェリー・ヤン氏、ヘンリー・ポールソン氏(米 財務長官)らの名前から送られたメッセージを背景に、にこやかに公演をスタートさせた。ただ、ヤン氏からは「なぜ君はわたしからのFacebookリクエストをキープしたままなの?」、ポールソン氏からは「新しいバージョンのMicrosoft Moneyを送ってくれないか?」など、メッセージは激励とはほど遠いものも混じっており、会場の笑いを誘う。
ただ、それから始まる公演の本題にジョークの要素はほとんど無かった。昨年、ゲイツ氏は「10年度のデジタルライフ」がどのようなものになるかという、希望に満ちた未来予想図を語ったが、バルマー氏はより近未来のデジタルライフへ同社がどのようにかかわっていくか、というより具体的な姿を語った。
ジョーク的な要素は冒頭を除いてなく、同社製品やサービスの紹介に入る前に、「デジタルライフの拡大は続いていくと信じているし、技術の革新も続いていく。そのためにも、Microsoftは積極的な研究開発を続けていく」と切実なセリフを前置したあたりに、同社とて、世界的な不況下とは無縁ではいられないことを伺わせた。
そうして、公演は進んでゆく。一般向けβ版の提供も間もなく開始される「Windows 7」や、「Windows Live」の新機能、Windows Mobileなどについてもデモを交えながらの説明が行われた。また、Windows LiveについてはDellおよびFacebookと提携することを、Verizon Wirelessへ同社の携帯電話向け検索エンジンサービス「Windows Live Search」を提供することも公演の中で明らかにされた。
ただ、こうしたデモに先立って、バルマー氏が最も強調したのは「すべてがつながる」ことだ。現代生活のなかで、PCと携帯電話、テレビはどれも大きく人々の生活に関与しているが、同社の描くビジョンのなかではそれらは独立しておらず、何らかのカタチでそれぞれが関与し合う。「クラウドを通じて、すべてのデバイスが接続されるイメージだ」
このクラウドという言葉からは、広義な意味での「クラウドコンピューティング」を連想するが、バルマー氏はWindows Liveを「わたしたちにとってのクラウド」と表現するほか、「そうした時代、携帯電話やテレビは重要な位置を占めるだろうが、中心はWindows PCにあると信じる」とPCの優位性も強調した。
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