今年もデジタルビデオカメラの春モデルが各社から登場した。小型で安価な標準解像度(SD)記録の製品も引き続きリリースされてはいるが、フルHD(1920×1080ピクセル)記録に対応したモデルが当たり前になったこともあり、価格差やサイズの差は確実に縮まっており、これから買うのなら、やはりフルHD対応のカメラがおすすめだ。
とくに今春モデルは、従来よりワンランク上の性能や機能を備え、完成度を高めた製品が多く、DVやDVDといったSDのカメラを使ってきたユーザーも、買い替え候補としてぜひチェックしてほしい。
この特集では、各社から今春モデルとして発表されたフルHD対応カメラの中から代表的なモデルを取り上げ、選択のポイントを解説する。今回はまず前段として、今春モデルの全体的なトレンドを3つのポイントで紹介していこう。
最初のポイントは、撮影した映像を記録するメディアの動向だ。多様な選択肢が用意されていた昨年までの状況は一変し、ここにきて急速に整理が進んでいる。ミニDVテープやDVDディスクに記録する製品は、家庭向けHDカメラとしてはほぼ姿を消し、今春モデルでは内蔵HDDもしくは内蔵メモリと、着脱可能なメモリカードの双方に動画を記録できるものが主流だ。これにともない、記録フォーマットもMPEG-4 AVC/H.264で映像を圧縮する「AVCHD」方式のモデルが大半を占めるようになった。
ユーザーにとっては、記録メディアや方式で悩む必要がなくなっただけでなく、多くの製品が大容量記録メディアを内蔵したことで、長時間の撮影が手軽に楽しめ、メディアを買い忘れる心配もないといったメリットも享受できるようになったわけだ。
一方、撮影後の編集や保存といった場面では、簡易編集ならばビデオカメラ本体内でも行えるものの、本格的な作業にはPCなどの外部機器への接続が必要で、しかもいまだに制約も多いといったデメリットが突きつけられていることも忘れてはならない。そこでこの特集では、撮影後の編集や保存にまつわる最近の動向もチェックする。
次に注目すべきトレンドは、カメラとしての完成度が確実に高まったことだ。これは、先に挙げた記録メディアおよび記録方式の整理に加え、フルHD対応や本体の小型化といった基本的な技術も昨年までに各メーカーで確立されたため、単にフルHD対応であったり、本体が小型であったりといった特徴だけでは他社との差別化ができなくなったことが背景にある。本体の小型化よりも画質の向上に重点を置いてモデルチェンジを行ったメーカーが相次いでいることが、こうした傾向をよく表している。
ここで今回取り上げる製品を簡単に紹介すると、まずは「デジタルカメラ」という側面からのアプローチでフルHD機をリリースし続ける三洋電機“Xacti”「DMX-HD2000」。次に、HDD記録の小型モデルで昨年スマッシュヒットを飛ばした日本ビクターからは“Everio”「GZ-HD320」を取り上げる。
これらのいわば正常進化系モデルに続いて、キヤノンからは、CMOSの大型化と高画素化に加え、光学メーカーらしくレンズの熟成で画質の大幅アップを図った“iVIS”「HF S10」をピックアップ。「裏面照射型CMOS」という新たな撮像素子で、低照度時の画質を劇的に改善したソニーの「ハンディカム」からは、最上位機の「HDR-XR520V」を取り上げる。最後に、撮像素子を3枚搭載する3MOS方式にこだわるパナソニックの新モデルとして、HDDとメモリカードの両記録に対応する「HDC-HS300」を紹介したい。いずれも見どころの多い製品で、画質や機能に注目している向きも多いのではないだろうか。
これら5モデルは、ターゲットユーザーが重なるガチンコ勝負の製品もあれば、今回取り上げたモデルの中にはライバルが存在しないものもあるため、一概に比較はできないが、今春モデルの特徴をつかむうえで参考になれば幸いだ。
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