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“見えないトコロ”が進化したラックシアター、ヤマハ「YRS-1100」新旧製品比較(1/2 ページ)

» 2010年10月29日 17時20分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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 薄型ディスプレイの理想的な設置方法といえば、スマートな収まりや災害時の安全面から考えるとやはり“壁掛け”だろう。しかし現実を見ると、賃貸住宅では壁に穴を開けるわけにもいかず、持ち家だったとしても壁の強度がフラットディスプレイの荷重に耐えられないケースも多い。新築と同時に薄型ディスプレイを購入するチャンスでもない限り、壁掛け設置は現実味に欠けるというのが実情だ。そうした理由もあって、日本ではローボード的なAVラックに薄型ディスプレイを設置するケースが主流だ。

 そして近年注目を集めているのが、サラウンドスピーカーを一体にしたAVラック、いわゆるシアターラックである。シアターラックは、多くのテレビメーカーが販売しており、手軽さと省スペース性が魅力であるが、その多くは自社製品との組み合わせが前提で、デザイン的にも似たりよったりと選択の幅はあまり広くない。そのような中、しゃれたデザインとYSPシリーズ譲りの音質で独自の地位を築いているのが、ヤマハの「POLYPHONY」(ポリフォニー)シリーズだ。

ヤマハ「POLYPHONY」シリーズの「YRS-1100」。50V型までの薄型テレビに対応している

 スピーカーが収められていると思えないほど厚みが押さえられた天板と、開放感のあるオープンスタイル、それを支えるアルミ製の支柱など、まるでヨーロッパ家具のようなスタイリッシュさを持つポリフォニーは、2008年のデビュー以来、若いユーザー層を中心に支持されてきた。そのポリフォニーが、この冬装いも新たに生まれ変わった。さっそくヤマハの試聴室におじゃまし、実機をチェックさせてもらおう。

7.1チャンネル対応、3DパススルーやARCも装備

 新ポリフォニーは、65V型までの薄型テレビに対応する「YRS-2100」と、50V型までの「YRS-1100」、42V型までの「YRS-700」という3モデルがラインアップされた。この中から、今回は主流となるサイズのYRS-1100を中心に話を進めていくが、その前にほかの2製品についても簡単に紹介しておこう。まずYRS-700は、国内でニーズの高いコーナー設置に対応したコンパクトサイズ。天板の左右後方を切り落とし、部屋の隅に設置しても省スペースを実現した。一方のYRS-2100は、天板が1600ミリの幅を持ち、ラック部分は3列/2段と収納力が高い。大画面テレビと多くのAV機器を所有するユーザーにはぴったりだろう。

型番 YRS-2100 YRS-1100 YRS-700
横幅 1600ミリ 1200ミリ 1000ミリ
対応サイズ 〜65型 〜50型 〜42型
カラー アーバンブラウン、ブラック アーバンブラウン、ブラック、ホワイト ブラック、ホワイト
外形寸法 1600×400×445ミリ 1200×400×445ミリ 1000×450×450ミリ
実売想定価格 13万円前後 10万円前後 8万円前後
発売時期 10月 9月
価格はすべてオープンプライス

 ポリフォニーシリーズには、ヤマハが得意とするサラウンドシステム「デジタル・サウンド・プロジェクター」が搭載されている。多数の小型スピーカーから音をビームのように直線的に放射し、部屋の反射を積極的に利用することでサラウンド空間を生み出すという独自のシステムだ。この方式が有利なのは、一般的な一体型サラウンドスピーカーが位相などコントロールして音が横や後ろから聴こえてくるように脳に“錯覚”させているのに対し、本当に横や後ろから音が聴こえてくること。空間表現に個人差が少なく、聴く場所によって印象が大きく異なることもない。一体型サラウンドとしては、かなり有利なシステムとなっている。

 新製品では、全モデルがHDオーディオのデコードと7.1チャンネルサラウンドをサポート(YRS-700はエアサラウンドエクストリームによる7.1チャンネル)。さらに3D映像やARC(オーディオリターンチャンネル)など、最新のHDMI規格にも対応するなど、機能面の不足はほとんど見あたらない。またヤマハ独自の3Dサウンドモードや、スクウェア・エニックスとの技術交流によりリニューアルされたゲームモードなど、プラスアルファの魅力をいくつも兼ね備えている。加えてユニークなのは、フロントのヘッドフォン端子だ。こちらに普段使っているヘッドフォンを接続すれば、たちまち5.1チャンネルサラウンドヘッドフォンに早変わりするというから面白い。こういった心遣いは、ありがたいかぎりだ。

入出力端子の後ろに空間を設け、ケーブルを中央から下へ流すように整理できる(右)。前面にはサラウンド対応のヘッドフォン端子が付いた。オプションでiPodドックも用意(右)

 使い勝手の面でもさまざまな考慮がなされている。最新のHDMIリンクに対応しているため、ボリュームコントロールや電源の連動オン/オフ、入力切替など主要操作のほとんどがテレビ側のリモコンから行える。さらにHDMI入力端子が3系統用意されたため、端子不足に悩むこともまずないだろう。またオプションを利用することで、iPodも接続できることも嬉しい。

比較して分かった“見えない部分”の進化

 さて、ここからは実際のユーザビリティーについて触れていこうと思う。今回のテスト時、ヤマハの試聴室に比較検討のために前モデル「YRS-1000」を用意してもらった。基本デザインのアイデンティティーに変わりはないため、新旧のモデルを個別に見ただけではほとんど同じ。しかし、並べて比べると両者の差がはっきりと出る。

 まず、スピーカーを内蔵する天板部分。厚さは従来機と同じ10センチのはずだが、下部の角を落としたために、さらに薄くなった印象を受ける。床板は少し床から浮かせたようなデザインになり、AVラックにありがちな“重々しさ”を取り除いている。またシルバーカラーの支柱もアールを持つサークルデザインとして、よりスマートになったイメージを与えてくれる。スタイル的には、先代に比べてより洗練されたといえるだろう。

 よく見ると、棚板とアルミ支柱の組み方が従来モデルと異なっている。従来モデルは支柱側に溝を切って棚板をはめ込んでいるため、棚板の位置は固定だ。しかし新製品は棚板のほうに溝が切られ、アルミ支柱には3つの穴。つまり、3段階で高さを変えられるようになったのだ。AV機器の高さは製品によってさまざまのため、こうした配慮はありがたい。また、ラックの下段にあった左右を仕切る縦板もなくなるなど、AV機器の設置性に関しては格段に柔軟性が上がっている。

従来機「YRS-1000」の棚板。支柱のほうに溝があり、棚板の位置は動かせないことが分かる(左)。新製品「YRS-1100」では、棚板側に溝を設け、3段階で高さ調節が可能(右)
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