「今年はオーディオ機器が大豊作」というAV評論家・麻倉怜士氏。11月に行われた関連イベントでは、講師として忙しく会場を走り回っていた同氏だが、新製品をチェックする目に疲れは見えない。前編ではKEFの「Q Series」や「デノン100周年記念モデル」を取り上げたが、後編では手ごろで本格的なスピーカーや新しいオーディオの潮流を紹介してもらおう。
音展のサエクコマースブースでは、昨年の音展でも注目を集めたMHI(MICRO HOME INSTALLATION)のブックシェルフ型スピーカー「Evidence MM01A」を紹介していました。今年はトールボーイ型の試作機も展示していましたね。
MHIは、パイオニアでTADの音作りを担当していたEd Kojima氏が独立して、カリフォルニアで立ち上げた新興スピーカーメーカーです。Evidence MM01Aは1本4万円前後(ペアで8万4000円)の手ごろな価格ですが、アルミのリボンツィーターを使って1万Hzから12万Hzをカバーできる高域再生が特長。音はクリアで透明感が高く、女性ボーカルはまさに絶品です。さわやかな色気を感じさせる音ですね。
Kojimaさんは、自分の欲しい音を求めてEvidence MM01Aを作ったそうです。これは、いわばオーディオの原点であり、Evidenceがとてもヒューマンな音になった要因ではないでしょうか。また、参考展示のトールボーイタイプも聴いてみましたが、今は“低音をしっかり出そうとチューニングしている途中の音”といえるでしょう。来年あたりには発売されるかもしれませんので、こちらも楽しみですね。
ハリウッドの映画スタジオで多く使われているMK SOUND(デンマーク)からは、注目の新製品「MK950THX Select2」が音展でデビューしました。タイムロードのブースで7.2chシステムのデモンストレーションを行っていました。
スタジオと同じ機材を自宅で使うメリットは、ディレクターズインテンションに忠実な音場や音色を出せることです。950シリーズをじっくり聴く機会がありましたが、さすがDVDやBlu-ray Discのミキシングに使われているブランド。映画の音がすばらしいと感じました。
この音を実現するため、950シリーズにはいろいろな仕掛けがあります。例えばバスレフポートを作ると音に時間差が生じますから、フロント用の「LCR950」とサラウンド用の「SUR950T」は密閉型としています。またSUR950Tでは、正面と両側面の3方向にスピーカーユニットを備え、側面の一方(後方)を逆相駆動とすることで、前と後ろの音のつながりを良くしています。アンプ内蔵ウーファー「MX350Mk II」は、2つのユニットを使い、1つは下方に向けて設置したバランスド・プッシュプル・デュアルドライバー型です。
音の解像感はもちろん、情報量や定位感も充実しています。映画の音づくりには“DMSの法則”というものがあります。まず最も重要なのが“D”、つまりダイアローグで、次に“M”のミュージック、“S”のサウンドエフェクト効果音と優先順位が続きます。いかにダイアローグがナマナマしく、その人物らしく、あたかもそこでしゃべっているかのように聞こえるか。それはまさに再生装置の責任です。その点、MKのスピーカーはDMSのどれも、映画音響的なボキャブラリーにあふれています。血潮がたぎるような、良い意味で興奮する音です。特に音の情報感、スピード感が素晴らしく、まさに映画の魂がそこにあるようです。
価格は5.1chセットで70万2870円。ホームシアターにも導入しやすい“映画に特化したスピーカー”といえるでしょう。
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