「メイドインジャパン」から「クオリティージャパン」へ
麻倉怜士が直視した東芝の新興国戦略(1/2 ページ)
12月15日、中国・北京にある「北京中国大飯店」(China World Hotel)にて、東芝が中国市場に本格的に乗り込むという発表会が行われた(→目標は4倍、東芝が液晶テレビで中国市場に本腰)。私は発表会をつぶさに見て、さらに東芝ビジュアルプロダクツ社映像第二事業部長の徳光重則氏にインタビューする機会を得た。そこで東芝が進めている新興国戦略に関する重要な話を聞くことができたので報告したい。
今回の発表会は、非常に意外なものだった。なぜなら、これまでの常識では、先進国向けに画質や機能面に秀でた高級機を供給し、一方の新興国向け製品では、その国のニーズに合わせたと言えば聞こえはいいが、ローコストな製品を投入するのが日本メーカーの常識だったからだ。
ところが、今回はほとんど「CELL REGZA」と同じ――CELL REGZAから“全録”とネット接続などを除いた――「55X1000C」を投入するというのである。55X1000Cは、CELLと同じ処理をハードウェア(LSI)で実現する新エンジンを搭載した超高級モデルである。
しかも、発表会の内容も中国市場向けとしては型破りなものだった。東芝の画質に関する“こだわり”を述べ、いかに新製品がコントラストが高く、画質が良いかを比較してみせた。つまり、徹底的に画質訴求に突っ込んだものであった。発表会が終わってから何人かのディーラーに話を聞いたが、何度も“こだわり”という言葉が出てきたことに驚いていた。それは日本での発表会でも、これほど画質について触れないだろうと思われる勢いだった。
CELL REGZAといえば、2009年の秋に発売され、その年は専門誌のランキング企画を席巻するほど、日本国内では圧倒的に高い評価を得たモデルである。そのDNAを受け継いだモデルをあえて中国市場に投入する目的は何か。
徳光氏は開口一番、「ブランディングです」といった。「現在、東芝は中国市場ではとても少ないシェア(2%前後)しかありません。これから中国を本格的に開拓するにあたり、東芝が良いテレビを作っていて、その画質の高さが日本市場で高く評価されていることを、中国の消費者にお知らせすることが、戦略的に極めて重要だと考えました」(徳光氏)。
東芝はこれまで、先進国の市場を重点志向していたが、日本のエコポイント終了(2011年3月予定)や欧米の競争激化を見ると、今後、明るい展望を描くのは難しい。しかし新興国では、薄型テレビの比率がまだ10~20%と低く、これから急激な成長が見込まれる。
一般的に、新市場の開拓には2つの方法がある。1つは大衆向けの普及品を広め、その後に中高級製品を出してイメージを上げる“デパ地下作戦”。デパートの地下に食品を求めてやってきた人々を徐々に上の階に誘導するという形にメタファーできる。
そして、もう1つが“展覧会作戦”。最上階で催し物を行い、人の流れを作り、下の階で商品を買ってもらう。実際には高級機である55X1000Cが大量に売れるわけではないだろうが、超高画質モデルを全面に出してブランドイメージを確立するという点で、東芝のアプローチはまさに“展覧会作戦”にあたる。これは「シャワー効果」という言い方もある。
「意外に、といっては失礼かもしれませんが、新興国では先進技術に対してすごく高いニーズがあります。欧米では良いものを出してもなかなか認識されませんが、中国をはじめとする新興国は違います。われわれの調査では、先進国以上に高級なものが求められていることが分かりました。まず高級志向のユーザーに認知してもらい、その影響が幅広いユーザー層に波及することを期待しています」(徳光氏)。
高級品でブランドイメージを確立すれば、シャワー効果で大衆向けの製品にも波及するはずだ。発表会場で、展示機の画面に大きく「策略」と表示されていたのを見て、私はなるほど中国語では「戦略」を「策略」と書くのかと感心していたのだが、これはまさに“策略”である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
パナソニックHD子会社、使用禁止の生成AIに従業員約33万人分の個人情報をアップロード
-
2
「Claude Mythos 5」、危害の兆候を顧みず実在の開発者を標的に──AnthropicとAISIが分析結果を公開
-
3
PHP脆弱性でいち早くサービス停止したコドモン 背景に「被害が出てからでは取り消せない」
-
4
GMO、不正取引の被害額を補償へ 見舞金5000円も 「お名前.com」FX用VPSへのサイバー攻撃で
-
5
「お前らの作品は所詮コピーだ」――富野由悠季さん、プロ論を語る
-
6
GMO、「能動的サイバー防御」発動を政府に要請 「お名前.com」FX用VPSへの攻撃で
-
7
「AIでエンジニア派遣は不要になる」のか? 各社に肌感を聞いた 求められる人材、明確に変化
-
8
ロリポップ改ざん問題でツイート炎上のGMO熊谷社長、「強気すぎた」と謝罪
-
9
コミックシーモア、流出は最大約420万件に メールアドレスや生年月日など 不正アクセスの経路特定・遮断は完了
-
10
「お名前.com」 のFX自動売買VPS、不正アクセスで金銭被害か 「600万円の損失」「55万円なくなった」……報告相次ぐ
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR