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「DEGジャパン・アワード」で見えた“Blu-ray Discの今”(後編)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/4 ページ)

» 2011年03月04日 17時02分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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ベストインタラクティビティ賞ノミネート作 発売・販売元
エイリアン・アンソロジー:ブルーレイ・コレクターズBOX 20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
劇場版名探偵コナン天空の難破船(ロスト・シップ) ビーイング
サマーウォーズ バップ
「エイリアン・アンソロジー:ブルーレイ・コレクターズBOX」

 今回は、インタラクティブ機能もここまできたのかと驚かされました。中でも受賞作の「エイリアン・アンソロジー」は、本編上にコメントや関連情報のタグを置くことで、より深くコンテンツが楽しめる革新的な「マザーモード」を備えています。気になった情報をすぐに参照することはもちろん、ブックマークしておいて、後でまとめて見ることもできます。見ている映画の裏には、さまざまな設定など莫大な情報があることを再確認できるでしょう。

 さらにディスクを取り替えたとき、ワーニングや宣伝などをすべてカットしてすぐに本編を視聴できる「ディスク・アンバウンド」機能もすばらしいと思います。情報として必要なものもあるとは思いますが、2回目からは見なくても良いでしょう。“アンソロジーBOXならでは”のディスク・アンバウンド機能は、ユーザーのことを考えたとても良い機能です。ほかのBDにも広がってほしいという希望も含め、ベストインタラクティビティ賞を受賞したと言えます。


――旧作の映像や音を修復したタイトルを対象にしたベストレストア賞です。前編でも少し触れましたが、「サウンド・オブ・ミュージック」の製作45周年記念作が受賞しました。

ベストレストア賞ノミネート作 発売・販売元
サウンド・オブ・ミュージック 製作45周年記念 HDニューマスター版 20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
セブン ワーナー・エンターテイメント・ジャパン ワーナー・ホーム・ビデオ
バック・トゥ・ザ・フューチャー 25th アニバーサリー ブルーレイBOX ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン
「サウンド・オブ・ミュージック 製作45周年記念 HDニューマスター版」

 「サウンド・オブ・ミュージック」は、歴史的な名作を完ぺきに修復し、本物のフィルムのテクスチャーを再現しました。わたしは70ミリの映画を含めて何度もサウンド・オブ・ミュージックを見ていますが、ここまでの情報量と精細感を持っていたのは初めて。例えば、ドレミの歌のシーンでは、芝生がこんなに細やかだったのか、バックのお城はこんなに立派だったのかと驚かされました。

 マリア先生がカーテンで子どもたちの服を作るというシーンがあります。これは、ドラマの中で先生の地位を象徴する重要なシーンなのですが、2チャプター前を見ると、そのカーテンと同じものが映し出されていることが確認できます。画質が良くないと、その質感の共通性は分かりません。

 もう1つ。サウンド・オブ・ミュージックは写真集や豪華オルゴールなどを含むパッケージングも素晴らしいですね。コレクションマインドをすごく刺激されます。デジタル時代におけるパッケージメディアのあり方を見事に示していて、それも含めての受賞となりました。


――ノミネート作から審査員が好きな作品を選ぶ「審査員特別賞」は、前述の「ヒックとドラゴン」「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」、そして「Healing Islands OKINAWA2 〜宮古島〜」の3作品が受賞しました。さらにユーザー投票で選ばれる「ユーザー大賞」は、「エヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT)ADVANCE.」が獲得しています。では、最後に総括をお願いします。

 第3回DEGジャパン・アワードでは、3つのことが言えると思います。まず、すべての水準が上がってきたこと。画質が作品性を描き出すまでになり、音も「ここまで表現できるのか」というところまで来ました。インタラクティブ機能にもすばらしい提案が登場しました。3度目の正直ではないですが、2回目(前回)でジャンプして、3回目で着地に成功した。そんな印象を受けました。

 2つめは、3DがBlu-ray Discの文化に入ってきて、ホームエンターテイメントに定着する流れが見えてきたことです。良い作品が登場すると同時に、3Dで良い作品を作ろうという制作者側の意欲が感じられました。

 最後にコレクション性が重要と分かってきたことです。世界的に見ると、映画のネット配信が勢力を拡大していますが、物理的メディアと付加価値物をアソートすることで、新しい価値が生まれます。「サウンド・オブ・ミュージック」のように“所有して楽しいパッケージ”が出てきましたし、小澤征爾さんの集大成やエイリアンのボックスもまとめ方がすばらしいと思います。アワードに「パッケージ賞」を作れば、コレクションアイテムとしてのBDパッケージも増えるかもしれませんね。

 一方、今後に期待したい分野として、まずJ-POPの分野が希薄である点を挙げたいと思います。十分な商品性を持っているはずなのに、各メーカーとも力が入っていません。ソニー・ミュージックやエイベックスも積極的に出品してくれることを期待したいです。

 また、劇場でがんばっているはずの邦画もパッケージメディアはさえなかった。これは私見ですが、“映画”というくくりではアバターに代表されるような洋画の大作と並べられてしまうので、出品が少ないのかもしれません。別分野として評価することも考えるべきでしょう。

 来年も審査を頑張ります。第4回DEGジャパン・アワードを目指し、各ソフトメーカーが良い作品を作ってくれることを大いに期待しています。

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