9月上旬にドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2011」。近年、急速に国際展示会としての地位を確立した同ショーは、世界中の家電メーカーとプレスが集まり、最新トレンドを発信する。その展示会場は、AV評論家・麻倉怜士氏の目にどう映ったのか、振り返ってもらった。
――「IFA 2011」は家電業界にとってどのような位置づけのショーですか?
麻倉氏:端的にいえば、1月に米国ラスベガスで開催される「International CES」でコンセプトを発表し、より具体的な試作機を披露するのが9月の「IFA」や10月の「CEATEC JAPAN」です。家電メーカーにとっては、欧州市場が世界でも大きな比率を占めていますし、CEATECの国際色が薄まったぶん、最近は国際展示会としての地位を高めています。来場者数はCEATECより遙かに多いです。
今回、私は日本での仕事の都合で開催期間の後半しか行けなかったのですが、やはり抜群に面白かったです。IFAはCEATECと違い、展示ブースの半分くらいを商談スペースが占めていて、より商談の場という位置づけに近い展示会ですが、そのぶん活況を呈していましたね。
ただ、今年は中国メーカーのブースがかなり減りました。中国政府の補助金がなくなり、昨年まで小さなブースを設けていた中小企業が80ほど減ったそうです。しかし、中国からの来場者は飛躍的に増えているので、差し引きはプラスとのことです。一方、欧州もギリシャの金融危機などから分かるように景気はいまひとつですが、世界市場と捉えると、新しいデジタル化の波が見えてきたショーだったと思います。
――テレビの最新動向について教えてください。
今年のIFAは、CES以上にテレビの新しいトレンドが見えた展示会でした。1つは、スマートテレビ。欧州でもテレビのネット対応が進み、コンテンツプロバイダーが盛んにテレビ向けのアプリケーションを提案していました。
これは、番組のアプリという形で配信され、画面上にアイコンとして表示されます。従来はコンテンツプロバイターのサービス名(日本ならアクトビラなど)を冠したアイコンがメインだったイメージかと思いますが、今はサッカーの試合など、個別のコンテンツ名がアイコンになる状況になっています。
この点で、一番分かりやすいのがパナソニックでした。スポーツなど地元のプロバイダーから供給されるコンテンツをアイコン化して、より具体的に内容が分かるイメージで提案していました。7月からはクリエイターに呼びかけ、VIERAのプラットフォーム向けのアプリを募集しているそうです。こうした試みの成果は、2012年以降に出てくると思います。
もう1つの動きは、テレビと周辺デバイスの連携機能です。ソニーの「Sony Tablet」は、同社製デジタル機器の間をつなぐコントローラーとしての位置づけを持っています。スマートデバイスとしてのテレビやレコーダーは、単体よりもほかのデバイスと連携したほうが役に立つ。そのメリットを明確にしました。
韓国サムスンは、タブレット製品が訴訟問題のために展示されていませんでしたが、大きな展示場の4分の3をテレビが占め、さらにその4分の3はスマートテレビ関連の展示でした。スマートテレビが持つ機能を1つずつ、丁寧に解説しているのが印象的でした。
――東芝やシャープが4K×2Kテレビで新しい動きを見せました。
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