なぜか真空管アンプの新製品が増えている。それも“ぷち流行”の兆しがあり、PCオーディオ用のアイテムとして注目が集まっているのだからおもしろい。デジタル機器の1カテゴリとなるPCと、アナログ世代のアイコンともいえる真空管が、オーディオというくくりで希有な融合を果たしている。“ある世代”にとって、興味引かれないわけにはいかないだろう。
あくまでも推測だが、これには、
……そんな流れから来ている状況なのだろうと考えている。
加えて、もちろん「真空管アンプそのもの」がいまだ魅力ある存在だからこそといえよう。そのたたずまいもサウンドも、時代を超えて愛されるキャラクターを持ち合わせているのは確かだ。
そんな、“ぷち”真空管アンプブームの中、上海問屋の「USB DAC機能搭載真空管アンプ(DN-SE84iシリーズ)」は、かなり貴重な存在と言える仕様を備えている。なぜなら、入力段と出力段の両方に真空管を配置した、昔ながらの純粋な真空管アンプだからだ。
ここで1つ解説を。オーディオ用のパワーアンプは“多段増幅方式”というシステムが使われているものがほとんどで「入力段(ファーストステージ=初段とも呼ばれる)」は主に電圧の増幅を、「出力段(ファイナルステージ=最終段とも呼ばれる)」は主に電流の増幅を担っている。昔ながらのアンプは、この両方に真空管を配している。
なお、真空管は電流増幅の利得があまり大きくない特性があり、大出力のパワーアンプを仕立てるには、真空管を複数本使う大がかりなシステムが必要となる。ゆえに、最近登場している真空管アンプ製品は、入力段に真空管を、出力段にソリッドステート(IC)を組み合わせているものが多く、こちらは「ハイブリッドアンプ」と呼ばれている。真空管とICのメリットをそれぞれ得るのでこちらはこちらで結構いい感じな製品もあるが、さておきそんな時代にあえてフル真空管仕様のアンプが本機──というわけだ。意外に本気であることが少しお分かりいただけるだろう。
そのため、本機の最大出力は5ワット×2とあまり大きくない。ICと違い、真空管アンプは最大出力まで使い切ることができるため数字以上にパワー感やダイレクト感が得られるメリットがあるものの、それでもデスクトップでの比較的小さいシステム用とした構成だからこそ、フル真空管が実現できたものと思われる。
続いて機能面の詳細を見ていこう。
入力はUSBとアナログRCAの2系統で、どちらの端子も背面に配置する。入力切り替えはフロントパネルのダイヤルを回して行う。USB端子はUSB DAC機能を備える機器としては珍しく、USB Standard-Aタイプを採用する。出力は、スピーカー出力に加えてヘッドフォン端子をフロントに用意する。ヘッドフォンでも真空管アンプ経由での音楽再生を楽しめる。
ずっしりと重いボディ(重量約6.5キロ)は、手にしただけでもその本格派ぶりを感じさせてくれる。余計な振動をしっかり抑えてくれそうなこの重量感は、サウンド的にも期待できそうだ。
前面にEL84×2+6N3×2の真空管、後方にトランスという縦長レイアウトは小型真空管アンプの定番のものだが、机上での収まりはさほど悪くない。ただ、使用で熱くなる真空管に触れないよう注意は必要だ。真空管の左右に棒状の保護ガードはあるが、それ以外にオプションでカバーなどを用意してくれるとありがたいと思う。
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