PCオーディオにとって、2011年は「拡大の年」だった。USB DACを中心に、PCオーディオ関連の新機器がこれまで以上にグワッと登場し、その爆発的な種類の拡充さに驚かされた。筆者も、実はここまでPCオーディオが盛り上がってくるとは思っていなかった。
プロフェッショナル方向を含むDTM的ニーズにより、PCで高音質サウンドを取り扱うようになってきたのはおよそ10年前。2005年くらいからPCも再生専用オーディオ機器として活用する例も増えた。基本的には熱狂ファンを中心に高音質への追求が進められていたが、携帯音楽プレーヤー、特にiPodやiPhoneの普及と相まって、ここ2〜3年で「PCオーディオ」というカテゴリがじわじわ一般層まで下りてきた。以前は「PC標準のオーディオ出力で十分。USB DACで音質が変わるはずない」と言う人も少なからずいたが、2012年現在は「変えれば・導入すれば、確かに音も変わる」という認識になってきている。
ここまでスムーズに「PCオーディオ」という楽しみ方が浸透してきたのは、利用者が多い音楽再生・統合管理アプリケーションである「iTunes」などによりPCが音楽再生機にもなる土壌が普通に整えられていたこと、USB DACなどの普及によって手軽ながら確実なグレードアップを体験できるようになったことなどが大きいが、それ以前にPCオーディオに挑むPC利用者自身にその素養があったことも事実だろう。
例えばサウンドカードやグラフィックスカードなど。高性能・高品質なパーツに交換すればクオリティが向上することを“知っている”PC利用者だからこそ、音質もグレードアップしたいならどうすればいいかを考える。PC、特に自作PCは、汎用性が高いゆえにオーディオ機器としても大いに「使える」アイテムであり、同時にPC利用者自身が親和性の高まりを待っていたというが重要なポイントといえる。そう考えると、今後のPCオーディオ発展のカギは、いかに“何らかのこだわりを持つ”ユーザーのニーズに応えられるかという点が重要になってくる。
実際、2011年のPCオーディオは「手軽さ」「確実な音質向上」という点で、ユーザーニーズを満たす製品がいくつも登場した。USB DACを例にすると、まずドライバレスの(OSの標準ドライバで動作する)手軽さが前提で、次にハイレゾ音源にも対応する「96kHz/24ビット」対応とするサンプリング周波数(1秒あたりアナログ/デジタル変換を何回行うかとする値)と量子化ビット数のスペックが高いモデルが主流となっている。2010年までは多数あった48kHz/16ビットなど、それ以下のスペックの製品は消えつつある。
一方、よりハイスペックな「192kHz/24ビット」対応製品もかなり登場している。こちらは独自ドライバのインストールが必要なため、PCオーディオに慣れてきたユーザーのステップアップ時など、一段階レベルの高いモデルと位置付けられる。とはいえ、これまでの(扱いにややクセがあるとされていた)ASIO(Audio Stream Input Output)ドライバを利用するのではなく、付属ソフトウェアのインストールのみで全性能が引き出せる製品が中心になってきたのもユーザーニーズに呼応したものだろう。このように、より手軽に扱えるようになった点、それに応じて製品数が大幅に増えたこと、そしてPCオーディオを改めてはじめてみる人がじわじわ増えているのが2011年のPCオーディオにおける傾向だった。
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