富士通研究所は、映像の画質を大きく劣化させることなく、携帯電話で読み取り可能な情報が埋め込める通信技術を開発した。家庭用テレビやデジタルサイネージへの採用が期待できる。
通常、テレビやデジタルサイネージで流される映像は一方的に情報を発信するのみであり、そこから興味をもったユーザーはPCなどから別途検索することで情報を取得しなければならない。この一方的な配信と情報取得の間にある断絶を解消するものとして、映像になんらかの信号を埋め込む研究は以前から行われていた。しかし特殊な受信機が必要なものや、送信側と受信側での認証が必要なもの、配信する映像の画質などに大きな影響を与えるものが多く実用的ではなかった。
富士通研究所が開発した新たな通信技術では、映像に人間の目で認識できない程度の微小な灯りを埋め込んでいる。灯りの増減によって光通信のような明暗を緩やかに発信し、情報を送信する仕組みだ。情報は1を表す波と0を表す波の2つの明暗タイミングによって配信し、1秒で約16ビットの情報送信が可能。受信するには、画面を2〜3秒程度、携帯電話で撮影すればよい。
人間の目は急激な変化には気づいても、緩やかな変化は認識しづらい。この特性を利用して灯りの数をゆっくりと増減させることで、画質に大きな影響を与えず信号を乗せる。画面全体の明暗が気づかれにくいため、明暗の変化を大きくして、より遠い場所から撮影しても情報を受信可能にできるという。
広告事業者が自社サイトのURLを表示したり、クーポンの配信に利用できるほか、CMの効果測定やイベントと連動した新サービスにも活用できるという。富士通研究所では、テレビ映像から携帯電話へ配信する通信速度を改善して2013年中に実用化を目指す。
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