Android端末を中心に採用が進むモバイル機器用インタフェース「MHL」(Mobile High-Definition Link)。これまで対応機器はスマートフォンやタブレットが中心だったが、ここへきて国内向けのAV機器にも動きが見え始めた。MHLプロモーターの1社であり、HDMI/MHLコントローラーチップを製造するシリコンイメージジャパンが開催したプレス向け説明会で現状を聞いた。
MHLは、2010年4月にノキア、サムスン、シリコンイメージ、ソニー、東芝がプロモーターとなってコンソーシアムを設立。2011年の5月に初めての製品が市場に出てからわずか2年間で対応メーカーが136まで増えたという。「スマートフォンやタブレット、テレビ、AVアンプなどに搭載され、2011年は5000万台の対応製品が出荷された。2012年は1億台を超えると見込んでいる」(MHL,LLCのプレジデント、Tim Wong氏)。
MHLは、スマートフォンなどのモバイル機器をハイビジョンテレビに接続するためのシリアル・リンク技術だ。HDMIに比べて線数が少なく(5芯)、コンパクトなコネクターを実現しながら、非圧縮の1080p/60Hz映像と8ch(7.1ch)音声の伝送やIP通信が可能。さらにHDMI CEC互換のRCPというコマンドコントロールをサポートしているため、テレビやAVアンプのリモコンでモバイル機器を操作できる。HDMIと同様、HDCPのコピープロテクションにも対応した。
「例えばMHLによるメディア共有。スマートフォンで撮影した動画や写真を大画面テレビで視聴できる。スマートフォン向けのゲームも、端末を充電しながら皆で楽しめる。映像を圧縮せずに転送するMHLは、ディレイ(遅延)が少なく、シューティングゲームなどにも適している」。
もう1つの特長は、テレビやAVアンプなど映像/音声の受け手側からモバイル機器に対し、5ボルト電源を供給できることだ。スマートフォンなどからテレビに映像を伝送しながら、スマホを充電できる。「スマートフォンに特化した仕様の1つが電源の供給。HDMIは、逆に表示デバイスに給電する仕様のため、モバイル機器の充電ができない。USBなら充電は可能だが、映像は伝送できない」。
さらに今年4月には、「MHL 2.0」の仕様がリリースされた。変更点は、電源供給が従来の500mAから900mAへと拡大したこと、RCPでのUnicodeキャラクターのサポート、そして3D映像の伝送に対応したことだ(3Dのフラグに対応)。現在の3Dテレビが対応しているサイド・バイ・サイドやトップ・アンド・ボトム、フレームシーケンシャル(1080p/30Hzまで)といった各種3Dフォーマットに対応できる。
しかし日本では、スマートフォンやタブレット端末を除くとまだ対応機器が少ない。薄型テレビでは、シャープの“AQUOS”のパーソナルサイズモデル「K7シリーズ」やLGエレクトロニクスの「LG Smart TVシリーズ」程度。東芝は欧州・新興国向けの液晶テレビでMHLを採用しているが、国内モデルでの採用例はない。
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