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“聴き放題”にもう一工夫、「ひかりTVミュージック」の挑戦(1/2 ページ)

» 2013年03月04日 23時44分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
NTTぷららサービス本部・ビジネス戦略部の橘堂将佳氏

 NTTぷららは、定額制音楽配信サービス「ひかりTVミュージック」を3月1日に開始した。最近、同様の“聴き放題”サービスに関するニュースが増えたが、実際はどのような仕組みで、何が異なるのだろうか。同サービスを担当するNTTぷららサービス本部・ビジネス戦略部の橘堂将佳氏に詳しい話を聴いた。

 「ひかりTVミュージック」は、月額980円で100万曲以上が“聴き放題”となるサブスクリプション型の音楽配信サービスだ。iOS 5.0以降の「iPhone」およびAndroid 2.3以降のスマートフォン(一部非対応機種あり)、そしてひかりTVのセットトップボックス(以下、STB)で利用できる。ひかりTV会員でなくても加入できるが、会員ならリビングルームのテレビやオーディオセットでも楽しめる仕掛けだ。

 まず“聴き放題”サービスを始めた背景について聞くと、「近年、国内の音楽市場は縮小傾向にありますが、一方で海外を中心に聴き放題のサービスが勢いを増しています」と話す。例えば、調査会社マイボイスコムが昨年10月に実施したアンケート調査によると、1カ月あたりに音楽にかける金額が「0円」と回答した人が全体の68.6%を占めた。2004年の調査開始以来、もっとも多い数字であり、年々音楽にお金を使う人が減っていることを示している。最近はCD売上ランキングをアイドルが占めるようになり、テレビからは音楽番組が減った。それらの事情はともかく、良い楽曲があっても一般消費者が触れる機会が少なくなっているのは確かだ。

出典:マイボイスコム

 一方、同じく3月1日に月額料金を980円に引き下げたソニー「Music Unlimited」をはじめ、海外では「PANDRA」(パンドラ)や「Spotify」(スポティファイ)といったサービスが勢いを増している。「Spotify」は、最近米国に上陸して話題になったスウェーデン生まれの音楽聴き放題サービスで、1500万以上といわれる楽曲カタログを月額9.99ドルで利用できるのがメリット(4.99ドルのプランもあり)。また米国の無料楽曲ストリーミングサービス「PANDRA」は、独自のアルゴリズムを使い、入力したキーワードに関連した楽曲を次々に再生してくれる。

 「好きな曲をいつでも好きなだけ聴ける“聴き放題”は、新しい音楽の出会いを演出するものです。今聴いている楽曲を起点にして、アルバム関連アーティストといったリンクをたどれば、どんどん知らない楽曲を楽しめる。日本の音楽業界もそこは重視していると思います」(同氏)。

聴ける楽曲は?

 “聴き放題”サービスの場合、評価を決めるのは楽曲のラインアップと使い勝手だろう。100万もの曲の中から、お目当ての楽曲や好きなジャンルの楽曲をいかにスムーズに見つけ出せるか。興味のある音楽ジャンルや、そのときの気分にあわせて曲を聴きたいといった利用者の欲求に応えられるか。そもそも100万曲という数字はインパクトはあるものの、世にある音楽すべてをカバーできるわけではない。知らない音楽との“出会い”以前に、起点となる“好きなアーティスト”の楽曲が含まれているかも重要なポイントになる。

STBの画面

 ひかりTVの場合、楽曲の調達はしていない。ひかりTVミュージックは、レコチョクとの提携による「レコチョク support」サービスであり、楽曲の調達やサービスの品質を担保するのはレコチョクだ。このため、楽曲のラインアップはレコチョクが3月4日にサービスを開始した「レコチョク Best」と基本的に共通で、楽曲数は洋楽・邦楽を含めて100万曲以上となっている。レコチョクは携帯キャリアと組んで数年前から聴き放題サービスを提供しているが、従来は「洋楽中心に100万曲以上」だったのに対し、今回は「邦楽も充実している」と邦楽重視の姿勢。メジャーなアーティストの名前も多数あがっている(→関連記事)。

 具体的な邦楽の数を明らかにしていない点は気になるが、「例えばポップスという切り分けなら洋楽・邦楽あわせて全体の15%ほど。ジャンルごとに偏らないように配慮しています。さらに、月間“数十万曲”といったレベルで増えていく予定です」。

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