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寝正月の新しい相棒となるか? 「Hulu」の実力を探る(1/2 ページ)

» 2013年12月13日 09時45分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 忙しい毎日を送る現代人に朗報だ。今度の年末年始は、前後の土日を含めると12月28日(土)から1月5日(日)まで最大9連休と長い。旅行や趣味でアクティブに休暇を満喫するも良し。家でまったりと日頃の疲れを癒やすも良し。暖かいコタツにもぐり込み、ミカンをむきながら、見たかったテレビや映画をイッキ見するといった夢のようなことが、あと2週間で現実になる。

 そんな寝正月の良き相棒といえば、昔からレンタルビデオが定番だ。しかし、最近ではVOD(ビデオ・オン・デマンド)——つまりオンラインのビデオレンタルが台頭してきた。VODでは、テレビやPCなどの対応機器がインターネットに接続されていれば、店舗に行かなくても見たいものを視聴できる。返却もないから、寒い思いをして外に出る必要がない。寝正月と極めて親和性の高いサービスといえる。

ごろごろしながら映画を見る図(イメージ)

 さらにスマートフォンやタブレットが対応していると、ソファーにゴロ寝して、あるいは暖かい布団にくるまったままでも映画やドラマを堪能できる。もちろん外出時にも使えるため(あまり出たくはないが)、例えば年末年始に田舎へ帰り、「テレビ局が少ない」と嘆いている人にもありがたいサービスなのだ。今回は「Hulu」を例に、イマドキのオンラインVODを検証していこう。

実際、画質はどうなのか?

 オンラインVODの場合、インターネット接続環境が必須だ。映像と音声はストリーミングでサーバから継続的に送り出されてくるため、帯域幅が狭い(=回線速度が遅い)と映像に乱れが生じたり、途切れたりする可能性もある。ただ、最近はブロードバンドの普及に加え、動画圧縮技術や帯域制御技術の進歩により、その心配はあまりしなくて済むようになった。

 Huluの場合、映像は最大720p(1280×720ピクセル)。解像度の異なるデータをサーバ側に複数持っていて、アクセスした端末や回線の状況によって送り出すデータを替える仕組み。相手がモバイル端末だったり、回線が遅い場合には、解像度や情報量を落としたデータを自動的に送り出すことで映像の乱れを防ぐ。

対応するモバイル端末を持っていれば、ちょっとした空き時間も有効活用できる

 映画ファンにとってはフルHDではないのが気になるかもしれないが、この点は権利元の都合なので他社のVODも条件は同じだ。ただし、Huluの場合はハリウッドの大手スタジオが共同出資して設立された経緯もあってか、権利元との関係は緊密で、かつ映像クオリティーに対するこだわりも強い。

 配信する映像は、最初に権利元がマスターを制作し、各VOD事業者に提供するのだが、業界内では「最初にHuluのためにマスターを作れば、後で他の会社に渡しても問題は出ない」といわれている。最も品質にこだわり、ハードルの高い会社として認識されているからだ。

 逆にマスターの画質が高くてサーバ容量の負担が大きいと判断される場合でも、Huluは何もいわずに受け取り、サーバのほうを補強するという。以前インタビューに応じてくれたジオ・リー氏によると「フールー・ハイ・クオリティー・バー」と呼ばれる社内基準があり、基準に満たないものは流さず、逆に良いものは極力そのまま提供するという。とにかく「一番良いモノにする」という考えだ。

 この基準は社内で行う各端末向けのエンコード作業などにも強く反映されており、同じ作品、同じ解像度であっても他社のサービスとは画質が明らかに異なるケースがいくつも存在する。映像データが持つ情報量が違うからだ。

AppleTVで視聴中(左)。PCでアカウント情報を確認すると登録したデバイスが並んでいた。ニンテンドー3DSやAppleTVがそれっぽく見えないのはご愛敬(右)

 実際の映像をチェックすると、BDはともかく、相手がDVDなら勝るとも劣らない印象だ。iPadやPCディスプレイといった10〜20インチクラスの画面なら全く不満は感じない。さすがに「AppleTV」から50V型のプラズマテレビに出力したときはジャギーも見えてしまうが、色のりが良く階調性もそれなりに確保していて、コンテンツの物語性を阻害することはない。例えば「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)では飛び散る鮮血が美しく、モノクロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年)では怪しい陰影をしっかりと描き出している。……試聴タイトルになにか問題でも?

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