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“ナノコンポ”で聴くオーディオのスモールワールド潮晴男の旬感オーディオ(1/2 ページ)

» 2013年12月20日 13時16分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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 音楽の聴き方はいろいろある。その中でもっとも手軽な方法はたぶんヘッドフォンステレオだと思う。携帯電話やiPodをはじめとするウォークマン型の携帯プレーヤーとヘッドフォンさえあれば、時間と場所を選ばず、どこでも音楽を楽しむことができるからだ。

USB-DAC内蔵のプリメインアンプ「NANO-UA1」とCDドライブの「NANO-CD1」

 しかしながら、これをオーディオと呼んでいいのだろうか……。確かにウン十万円もするヘッドフォンもあるし、携帯プレーヤーに接続するヘッドフォンアンプも市販されている。手間暇をかければヘッドフォンでもいい音を聴く環境は整う。にもかかわらず、なぜぼくがそういうアンチテーゼをするのかというと、ヘッドフォンでは音場や音像というオーディオにとってとても大切な要素を描き出すことができないからである。

 ぼくはヘッドフォンを否定しているわけではない。住宅事情に恵まれない都会に住むわれわれにとって、深夜の大音量再生は防音や遮音のしっかりした専用のルームが必要になる。そうしたことができない場合は、ヘッドフォンは大切なお友達だ。しかしながら、時にはスピーカーが奏でる音楽に耳を傾けてほしい。そこにはきっと新しい発見があるからだ。

 かといってPCオーディオじゃあ寂しいなぁ。でも大型のオーディオ・システムを置くスペースはないし……。ミニコンポがあるじゃないかといわれそうだが、ありきたりでは満足できそうもない。そんな人に注目してほしいのが、東和電子がOlasonic(オラソニック)ブランドとして立ちあげた「NANOCOMPO」(ナノコンポ)である。

 2013年4月から順次製品を発売し、現在のラインアップは、USB-DAC内蔵のプリメインアンプ「NANO-UA1」、CDドライブの「NANO-CD1」、ヘッドフォンアンプを内蔵したUSB-DACの「NANO-D1」、パワーアンプの「NANO-A1」である。そしてこれらの製品の一番の特長は、アルミダイキャスト製のシャーシがそのまま本体ケースになっていることだ。サイズは149(幅)×149(奥行き)×30(高さ)ミリ。いずれもほぼCDの外装ケースと同じである。「CDドライブは世界最小の据え置き型だと思います」と代表取締役の山本喜則さんは胸を張って話す。「それにしても“ナノコンポ”という商標が良く取れましたねぇ」と尋ねると「そうなんです奇跡に近かった」との返事だった。

「NANO-CD1」はスロットローディング式のドライブを搭載(左)。東和電子の山本喜則社長(右)

 オーディオ全盛期の頃、テクニクスは「コンサイスコンポ」、ビクターは「マイクロコンポ」と名前を付けた製品をリリースしたように、家電メーカーは競ってお洒落で凝縮感のあるミニコンポを作った。しかしこの時代に「ナノ」のブランドまでは考えていなっかったということなのだろう。それでも未使用のまま残っていたなんて、やっぱり奇跡だ。

 運も実力のうちというが、山本さんは強運の持ち主なのかもしれない。東和電子は本来基板の設計やソフトウェアの開発を行う会社である。だから国内の大手メーカーとはたいがい取引があるが、そうしたご縁で山本さんは取引先だったソニーから転職した。「業績のしっかりした会社だったので、安泰だと思っていたんですよ」と山本さん。ところが2008年9月のリーマンショックで事態が一変する。大手メーカーがこぞって発注を控えてしまったからだ。転職1カ月後のことだった。「いゃあ、この時は参りましたね」。

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