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スマートデバイス中心のデジタル市場再編、テレビやPCの出番は?本田雅一のIFA GPCリポート(1/2 ページ)

» 2014年04月30日 19時35分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 トルコのベレクという都市で、2014年の「IFA Global Press Conference」が開催された。「GPC」と略されるこのイベントは、欧州最大の家電展示会「IFA」の前哨戦といえるプレスカンファレンス。世界中から300人以上のプレスを集めて開催される。アフリカや南米、中央アジア、東欧など、集まる国のバリエーションは筆者が参加する国際会議の中でもっとも豊富だ。

 毎年、初日にスポンサー企業からのプレゼンテーションセッションが行われ、2日目にはGfKやIFAを主催するベルリンメッセから市場データの提供と、それを元にした講演、さらには参加者によるディスカッションなどが行われる。年によってテーマは異なるが、昨年より浮かび上がっているのが、白物家電のプレミアムブランド化や、成熟後のデジタルAV機器に関するアプローチ、スマートフォン時代への対応、インターネットサービスと家電の統合といった話題だ。

GfKのコンシューマーエレクトロニクス担当グローバルディレクター、Juergen Boyny氏

 主催者や開催地の関係で、メーカーが提供する話題は大半が欧州関連になるが、そこから見えてくることもある。今回のテーマは「スマートフォン/タブレット革命がもたらした波及効果」ということになるだろうか。

 ご存知の通り、家電業界全体は2009年、リーマンショック後の不況に続き、スマートフォン革命による業界地図の更新が続いてきた一方、市場全体の売上げ規模は維持してきた。”維持してきた”という言い方に、日本の多くの読者は違和感を感じるだろう。なぜなら日本の電機メーカーはことごとく負け戦を戦わされてきたからだ。

 GfKがいうところの「維持してきた売上規模」とは、スマートフォン、タブレットなどのネット端末を含めたもので、これらいわゆる”スマートデバイス”で売れなくなった製品分の市場を、スマートデバイスが埋めている……というのが、彼らの説明だった。つまり、日本人からは、スマートデバイスで存在感を出している企業が国内に存在しないため、電機業界が縮んでいると見えるわけだ。

 デジタル製品の売上げ比率の変化を見れば、テレビやPC(ノート型とデスクトップ型の合計)がここ数年、比率として大きく変化していないのに対し、スマートフォンとタブレットが急増。激減しているデジタルカメラを中心に、”それ以外のほぼ全て”が均等に小さくなっている。目的ごとに数多くの製品を用意してきた、”スマホ前”のパラダイムで王者となってきた日本メーカーが厳しいのも致し方ないところだろう。

テレビやPCの比率はあまり変化していないが、スマートフォンとタブレットが急伸している(左)。2014年から2015年にかけて、薄型テレビとPCの買い替え需要の波が控えているという(右)

 しかし、ワールドワイド全体の視点で内訳を振り返ると、内訳が変わっただけでデジタル製品全体の規模は変わっていないという見方もできる。GfKはその立場だ。

 2011〜2012年はスマートフォンやスマートテレビなどによる市場拡大が縮小を埋め、新興国市場の拡大があったものの、2013年は新興国の成長が鈍化。引き続きスマートデバイスの売上げは伸びているものの、昨年は前年対比でデジタル家電市場はゼロ成長だったというのがGfKの見立てだ。

 すなわち業界全体では小さな成長率の中、成長する地域や商品カテゴリーが変化し、それによって業界地図も描き変えられてきた。しかし個々の企業の影響力は変化していても、マクロ視点では衰退しているわけではない、ということだ。

 とはいえ、今後の業界見通しは決してクリアではない。スマートデバイスによる産業革命ともいえるムーブメントも、先進国から新興国へと主要な舞台が移り、今後も成長エンジンとして機能するかどうか分からないからだ。

 しかし、GfKでは2014年から2015年にかけて、薄型テレビとPCの買い替え需要の波が控えており、成長が続くとの予測を示している。

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