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4Kネイティブ映像がもたらす“リアリティー”の世界麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/3 ページ)

» 2014年08月01日 14時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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究極の静止画番組? 「将棋女流棋士スペシャルマッチ2014」(東北新社)

「将棋女流棋士スペシャルマッチ2014」(c)東北新社

麻倉氏: 対局者、解説者含めすべてが女流棋士のスペシャルマッチです。美しい着物を着た3人の女流棋士が登場しますが、対局が始まると、将棋盤を上から撮った映像を中心に、左右に女流棋士を横から捉えた映像をワイプで入れるシンプルな画面。とにかくまったりとして時間がなかなか過ぎません。

 確かに着物はきれいですが、果たして将棋盤が4Kに向いているのでしょうか。でも、これはきっと私に将棋の知識がないから感じることであって、将棋を良く知っている人は女流棋士たちの立ち居振る舞いから何かを感じられるのかもしれません。4Kの良さは、番組にジャンルごとにそれぞれ出てきますので、このような実験的な番組も面白いと思いました。また8Kなどさらに解像度の高い画面が使えるようになったとき、Hybridcastで情報を画面のどこに配置するかといった実験でもあります。

「富士山 四季 水の旅」(NHK)

「富士山 四季 水の旅」(c)NHK

麻倉氏: 今回の4K試験放送では、昨年実施された「次世代衛星放送テストベット事業」で各放送局やコンテンツメーカーが実験的に撮影した4K映像がメインになっています。NHK関係では、NHKエンタープライズの「観世流薪能(たきぎのう)」もありますが、NHK本体(日本放送協会)が制作したのが「富士山 四季 水の旅」です。

 麓に多くの湧き水をもたらす富士山は、「水の山」と呼ばれていますが、表面には川が1本もありません。その知られざる「水の旅」を追いかけた番組です。ただ、はっきり言って、一番甘い映像ですね。4Kらしさはあまり感じられない“まったり系”。おそらく、RED Oneで撮影したのではないでしょうか。

 個々の映像を見ていくと、柿田川の“シズル感”は良く出ている部分はあります。精細感は不足気味ですが、階調性やコントラストなどが良く、トータルで見せる4K映像のあり方の1つといえるのではないでしょうか。

 

「THE 世界遺産4K Premium Edition Detail of the Earth −地球の素顔−」(TBS)

「THE 世界遺産4K Premium Edition Detail of the Earth −地球の素顔−」(c)TBS

麻倉氏: NHKの後でTBSの「THE 世界遺産4K」を見ると、全く違います。THE 世界遺産4Kにも富士山が登場しますが、こちらは極めてディテールまで描写され、コントラストも高い。世界遺産シリーズの撮影は、徹底的に質感を感じさせる映像で、今回の富士山はまさに晴れた日に見える鮮明な富士山です。

 Cannel 4Kでは、以前「THE 世界遺産4K ハイビジョン版」としてBSで放送された5本「アブシンベル神殿/エジプト」「ラヴェンナ/イタリア」「イエローストーン/アメリカ」「紀伊山地の霊場/日本」「カナディアンロッキー/カナダ」に新規撮影の「富士山篇/日本」「敦煌篇/中国」を加えた7本を視聴できます。

 THE 世界遺産4Kの素晴らしいところは、それぞれの世界遺産が持っている独自の価値が伝わるように撮影していることです。例えばイタリアの教会のモザイク画。着色した細かいガラスを貼り付ける手法ですが、4Kでは映像が画素からできていることを想像させてくれるような細密描写です。また、モザイク画を作るために着色ガラスを割るシーンもありました。怪しいブルーの輝きが美しく、断面はまた違う色を見せます。微妙な色の違いや階調性も感じられました。

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