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ホームシアターの革命、Dolby Atmosの衝撃(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/3 ページ)

» 2014年09月02日 11時54分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 前編では、「Dolby Atmos」(ドルビーアトモス)の技術概要とその効果について取り上げた。後編では、ドルビーの発表会場でデモンストレーションを行ったAVアンプメーカー4社の各モデルに加え、「ドルビー・イネーブルド・スピーカー」や「アップミックス」といった周辺技術の印象も合わせ、AV評論家・麻倉怜士氏のインプレッションをお届けしよう。

ドルビーの発表会場

麻倉氏: 今回は直前に製品を発表したオンキヨー、D&Mホールディングス(デノン)、ヤマハ、パイオニアの4社がデモを行いました。中でもオンキヨーは「ドルビー・イネーブルド・スピーカー」を含めて提案した唯一のメーカーです。

 まず、「ドルビーアトモス」と「ドルビー・イネーブルド・スピーカー」を簡単に復習しておきましょう。ドルビーアトモスは、音をオブジェクト化する「オブジェクトオーディオ」の手法と天井スピーカーを組み合わせ、従来のサラウンドとはまったく違う三次元空間での正確な音像定位を実現しました。単に上方向に音場を広げただけではない、という点は憶えておきましょう。

天井に設置されたスピーカー

 しかし一般家庭で天井に2〜10個ものスピーカーを設置するのは難しい。このため、フロントやリアのスピーカーの上に“斜め上向き”のスピーカーを置き、天井からの反射を利用して天井スピーカーを再現する「ドルビー・イネーブルド・スピーカー」技術を開発しました。しかも単純に音を反射させるのではありません。ドルビーの長年にわたる人の聴覚研究を元に、頭部伝達関数を応用して人が“音が降ってくる”感覚を濃密に得られるようにしました。米DolbyのBrett Crockett(ブレット・クロケット)氏は、「高周波領域は頭や耳、肩の反射で変わりやすい。音の周波数特性も少し変え、反射してくるのにあたかも天井から発音して聞こえてくるような音になる」と話していました。つまり、「ドルビー・イネーブルド・スピーカー」は、単に斜め上を向いたスピーカーを指す言葉ではなく、事前の信号処理を含む技術の総称なのです。

米DolbyのBrett Crockett(ブレット・クロケット)氏。発表会後に詳しく話を聞いた

――なるほど。その技術がドルビーアトモス対応のAVアンプには入っているのですね。オンキヨーブースでは、斜め上向きの小型スピーカーを使っていました

麻倉氏: 天井スピーカーは小さく、設定ではスモールにします。するとベースマネジメントが入って、一定以下の周波数帯域はサブウーファーに受け持たせる仕組みになっています。フル帯域でないのに完全な音場は保てるのか? とクロケットさんにたずねてみましたが、サブウーファーが受け持つ帯域は指向性を持たないため、決して音像が乱れることはないということでした。また、一部メーカーは天井スピーカーを「ラージ」指定を推奨しています。

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