今回は、ハイレゾ再生がとても手軽に楽める、本体にDACとアンプを内蔵した「一体型ヘッドフォン」に注目してみたい。
今秋、NTTドコモが7機種のハイレゾ対応を実現したAndroidスマートフォンを発売した。全ての機種がイヤフォン端子から、96kHz/24bitクオリティのハイレゾ出力に対応しているのだが、本体に専用のアンプを搭載していないため、外出先の騒音に囲まれた環境で音楽を聴くと十分な音量を得られないこともある。
こだわりの高音質ヘッドフォン/イヤフォンをしっかりと鳴らすだけのパワーを確保しながら音質も追求したい方には、まずはハイレゾ対応DAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプをおすすめするのだが、そもそもポータブルオーディオ機器のほかにアンプや、接続するためのケーブルまで持ち歩くのが面倒だという方や、予算の都合も含めて、もっと気軽にハイレゾのリスニング環境を整えたいという方には、“ハイレゾ再生環境・全部入り”のヘッドフォンは有力な選択肢の1つになるはずだ。
今回はそんなハイレゾ対応の一体型ヘッドフォンの中から、ポータブル環境を中心に活用できるソニーの「MDR-1ADAC」と、ノートPCなどUSBオーディオ環境でのハイレゾ再生に“フルデジタル伝送”という新境地を開拓したオーディオテクニカの「ATH-DN1000USB」という、2つの最新&注目製品を取り上げ、意外と身近なハイレゾの楽しみ方を紹介しよう。まずはソニーの「MDR-1ADAC」だ。
「MDR-1ADAC」は、10月末に発売されたプレミアムヘッドフォン「MDR-1A」をベースに、本体にデジタルアンプと192kHz/24bti対応のDACを一体化したポータブルヘッドフォン。ソニーは今秋にドイツで開催された「IFA2014」の会場で本機をお披露目したのだが、現地でソニーのオーディオ担当者にインタビューした際、本機の企画・開発意図を「スマホと組み合わせてよりいい音が楽しめるヘッドフォン」であると強調していた。その言葉の通り、本機はハイレゾ対応のAndroidスマホやiPhoneとの親和性がとても高いヘッドフォンなのだが、その詳しい使い方については後ほど触れてみたい。
音響面での特徴はベースモデルの「MDR-1A」をそのまま継承している。新開発の40ミリHDドライバーは、振動板には液晶ポリマーフィルムの表面にアルミニウムの薄膜をコーティングした「アルミニウムコートLCP振動板」を採用する。再生周波数のレンジは4Hzから100kHzの広帯域をカバーしている。鋭く正確なリズムを刻み、なおかつ力強さとボリューム感を兼備した低域を実現するための技術である「ビートレスポンスコントロール」も他のMDR-1シリーズと同様に搭載されている。
本機の心臓にあたるアンプには、ソニーの独自開発によるハイレゾ対応フルデジタルアンプ「S-Master HX」が組み込まれている。広い帯域でノイズや音のひずみを抑えて、クリアな解像感に富んだサウンドを鳴らすための原動力となる部分だ。DACは最大192kHz/24bitのPCM音源に対応。PCとの接続時にはジッターに起因するノイズをより低減できるアシンクロナスモードもサポートする。DSDのハイレゾファイルもPCM変換になるものの、5.6MHz/2.8MHzの再生が可能だ。
商品のパッケージには全部で4種類のデジタル接続ケーブルが付属する。いずれも基本的に本機で音楽再生を楽しむためのものだ。ケーブルは着脱式で、片側のヘッドフォンに設けられているmicroUSB端子に接続して使う。反対側の端子が4種類に分かれており、1つがPC接続と本体の充電に使う「USB-A」タイプで、他はiPhoneなどiOS機器用の「Lightning」タイプ、ハイレゾ対応ウォークマン用の「WM-PORT」タイプ、Xperiaをはじめハイレゾ対応スマホ用の「microUSB」タイプになる。このほかにもう1本同梱(どうこん)されている3.5ミリステレオミニ端子のアナログケーブルを使って、本体のアンプの電源をOFFにして通常のヘッドフォンとして利用することもできる。
つまり、本機が手元にあれば、デジタル接続による高品位なポータブルオーディオやPCによるUSB再生、通常のヘッドフォンケーブルでつないだ音楽リスニングがまとめて楽しめるというわけだ。ハイレゾを聴く場合も、本機のほかにポータブルプレイヤーやPCに音源とハイレゾ再生対応のアプリを入れておけば、環境のセットアップは完了だ。
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