おそらく今、多くのヘッドフォンファンが注目しているモデルの1つがオーディオテクニカのニューフェイス「ATH-MSR7」だ。今回は、その音質やハンドリングの実力を探っていきたい。
2014年は、オーディオテクニカが1974年に初めてヘッドフォンを発売してから40年目を迎えたアニバーサリーイヤーだった。オーディオテクニカといえばヘッドフォンのスペシャリストとして、ファンならずとも認めるブランドであり、Hi-FiからBluetoothワイヤレス、デジタルサラウンドヘッドフォンまで幅広いラインアップを抱えている。ポータブルヘッドフォンにも低域に特徴を持たせた“SOLID BASS”シリーズや、デザインとサウンドを高次で融合させたストリートモデルの“SONIC FUEL”シリーズなど個性的なモデルが発売されているが、純粋に「高音質」を追求したオーディテクニカを代表するポータブルヘッドフォンとして企画された製品がこの「ATH-MSR7」である。そこにはオーディオテクニカがこれまでにヘッドフォンを開発してきた40年の間に培った全てのノウハウが、惜しみなく投入されている。
本機の技術的な特徴を知る上で2つの大きなポイントを抑えておこう。1つは新開発の45ミリ口径ドライバーだ。「"トゥルー・モーション" ハイレゾオーディオドライバー」と名付けられている。
中核のボイスコイルは本機専用に作り込んだパーツを搭載している。磁界範囲に合わせて巻き数を調整して徹底的に軽量化を図ったことで、ダイアフラムの動きがスムーズになり、モーションを最大化することに成功した。その結果、音のレスポンスが切れ味を増して、全体的な音楽の描写力が深みを増す効果につながっている。
ドライバーに関わる重要な技術である「デュアル・アコースティックレジスター」は、内部にセンターレジスターとアウターレジスターと呼ばれる2つの音響抵抗材を配置して音のバランスをナチュラルに整えるというものだ。ほかにも、通常はフランジの孔の外周に沿って配置するPCBと呼ばれるパーツをドライバーのトップ位置にマウントすることで、空気の流れを妨げずに、よりクリアでひずみがなくヌケ感の高い音づくりを実現している。
ドライバー以外にもオーディオテクニカの先進技術を見て取れるもう1つのポイントは「デュアルレイヤー・エアコントロールテクノロジー」と呼ばれる内部構造に関わる技術だ。ハウジング内部に不要振動を抑える強靱なマグネシウムとアルミニウムの合金プレートを用いた2つの音響スペースを積層して、スペース内に生まれる空気の流れを緻密にコントロールすることでノイズを発生源からつぶし、より原音に忠実な音を再現するという仕組である。
本機の音づくりのテーマは高・中・低域それぞれに均しく特徴を持たせることにあった。これを具現化するためにはハウジング内に生まれる空気の流れと音のエネルギーを巧みにコントロールする必要があったことから、音響スペースの内部には3つの「孔=ベント」が配置されている。計算されたベストポジションに3つのベントを付けたことで、厚みのある低域と、クリアな中域、解像感の豊かな高域のパフォーマンスを合わせて実現している。
以上のオーディオテクニカの独自技術を踏まえながら、続いて本機の音質をレポートしていこう。
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