「2015 International CES」において印象的だったのは、日本の家電メーカーがコンシューマー向け製品から一歩引いた位置に立ち、特定業界向けのB to Bにシフトしていたことだ。もちろんソニーのように従来そのままの展示スタイルのブースもあるが、過去数年すでにB to Bに舵を切っていたパナソニックのほか、今年からB to Bに特化した東芝、そしてB to Bや技術展示を大幅に強化したシャープといった具合に、B to B関連展示の占める割合が非常に高くなった。
「Consumer Electronics Show(CES)なのにB to Bが主軸」というのも奇妙な気がするが、ベースとなる技術がコンシューマー市場で培われたものであったりと、両者がオーバーラップしている部分も大きい。「Android TV」「webOS TV」「Firefox OS TV」「Tizen TV」といった具合にスマートデバイスから生まれたOSがテレビへの進出を果たし、各メーカーの製品が一斉に出そろった年でもあり、「スマートフォンOSがテレビ市場でも火花」といった形でクローズアップされたりもしたが、ここではB to Bの視点から今年の展示を振り返ってみたい。
「Beyond 4K」が主役だった今年のシャープブースだが、その実は展示ブースの半分近くがB to B向けの展示スペースであり、特に同社のディスプレイ技術に関するものが占めていた。特に目立つのが104インチの5K2Kディスプレイウォールと120インチの4Kディスプレイウォールで、ともに業界最大クラスをセールスポイントにしている。
一方で、フレームレスデザインの55型パネルを4枚組み合わせて1枚のディスプレイウォールにする技術展示も行われており、こうした複数のバリエーションによって作られたディスプレイウォールで同じコンテンツを流すことで比較が行えるようになっている。
従来のディスプレイウォールと比較してのメリットは、4K対応によりコンテンツの精細さが向上していることがまず挙げられる。写真や動画のほか、空港でのフライト情報等のデモも混じり、1枚のディスプレイでフルHDに比べてより多くの情報を表示できる点をアピールしている。また120インチクラスのディスプレイはコスト的に割高となる一方で、比較的量産に向いた50〜60型パネルはそれよりも安価に製造が行え、比較的手頃なコストで大画面ディスプレイウォールが導入可能となる。これを実現するのが「フレームレスデザイン」で、いわゆる狭額縁ディスプレイを組み合わせてつなぎ目を目立たなくする仕組みだ。B to Bコーナーに展示されたパネル群は後述フレキシブルディスプレイと合わせ、ほぼすべてがこの「額縁を目立たせないデザイン」を全面に出しており、これがセールスポイントになっているようだ。
「Wraparound LCD Display」の名称で行われていた展示は、柱等に巻き付けることを念頭に置いた「凸型曲面ディスプレイ」で、従来のディスプレイウォールの概念からはやや幅広い用途への液晶ディスプレイの拡大を狙ったものだ。矩形以外のさまざまな形状への加工が可能な「フリーフォームディスプレイ」(FFD)と呼ばれるフレキシブルディスプレイと合わせ、これまで本格的な液晶搭載があまり進んでこなかった車のダッシュボードなど、産業向けディスプレイへの浸透を図る試みが進んでいる。透過率と画質を向上させたシースルーディスプレイや、さらに画質や反射率の向上したミラーディスプレイなども、こうした新しい分野への液晶ディスプレイの将来的な浸透を実現する技術になるかもしれない。
イメージセンサーに関する技術発表が多かったのも今年のCESの特徴だ。例えばソニーは車載イメージセンサー市場への進出を発表したほか、半導体メーカーの米NVIDIAは複数のイメージセンサーから取得した画像情報を高速でリアルタイム処理するための車載システムボードを発表している。「今年のCESは車関連の展示がスペースを占領していた」といった感想が多方面で聞かれたが、自社の強みとなる技術を車と絡め、現在高度化が進んでいる車載システム革新の波に乗るべく各社が競い合っていたのだが、ことITや家電各社ではイメージセンサーや通信技術に関する話題が多かったように思う。シャープの場合、車に搭載された複数のイメージセンサーを合成して1つの360度画像をリアルタイムで作り出すデモのほか、赤外線センサーで取得した暗視画像をカラー画像に変換する技術を紹介していた。まだ参考レベルではあるが、来年以降にこれら展示がどのように変化していくのかに注目していると面白いだろう。
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