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この価格帯では異色の出来――パイオニア「N-70A」使いこなし潮晴男の「旬感オーディオ」(1/2 ページ)

» 2015年02月04日 18時14分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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 いい音で音楽を聴きたい……本誌の読者に限らずオーディオファンなら誰しもそう願っていると思う。しかしながらCDにしてもアナログレコードにしても、いい音で聴くためには並大抵の努力ではおぼつかない。音を出すのは簡単だが、いい音となると一筋縄ではいかないからだ。そしてそのことはハイレゾ音源についても同じである。ハイレゾ音源は確かに多くの可能性を秘めているが、だからといって機器をつなげばバラ色の世界が広がるわけではない。

今回取り上げるパイオニア「N-70A」。価格は14万2000円(税別)

 CDが登場して再生音楽の平均レベルは上がった。アナログレコードと違い比較的投資額が少なくてもそこそこのレベルで音楽が聴けるようになった。アナログレコードを再生するためには、多くの構成要素……カートリッジ、トーンアーム、ターンテーブル、もっと細かいことをいえばヘッドシェルやシェルリード線だって変化の一助を担う。アナログレコードには変動の要素が満載されていたのである。

 ところがCDプレイヤーでCDソフトを再生するようになると、この要素が一気になくなった。CDプレイヤーはCDプレイヤーでしかなく、光ピックアップを差し替えるとか、ドライブメカを換装するといった、アナログレコード時代には当たり前だったお作法が一切通用しなくなった。

 ハイレゾがアナログレコードと同じというつもりはないが、少なくともCDより楽しめる範囲は多いように思う。とはいえハイレゾ音源には何となくとっつきにくい部分があるのも事実だ。パッケージという形がないだけに再生に関する方法論もたくさんあるから、それだけに悩むし迷う。

 そうした読者にとってハイレゾ音源のハードルをぐっと下げてくれたのがパイオニアのネットワークプレイヤー「N-70A」である。パイオニアは一昨年、初のネットワークプレイヤーとして「N-50」をリリースした。「N-70A」と同時に発売された「N-50A」はその後継モデルだが、彼らはその資産を流用することなく「N-70A」については筐体(きょうたい)から電源、信号処理回路に至るまで、すべてを一新した渾身(こんしん)の製品に仕上げたのである。

 このモデルの一番の大きな特徴はDSD 5.6MHz、PCMは384kHz/32bitの信号に対応するインタフェース・ボードとESS製の8チャンネルDAC「ES 9016S」を左右独立して使用しパラレル駆動することでノイズフロアを極限まで下げた信号処理ブロックを用いていることだ。

フルバランス回路とESS製の「ES 9016S」

 そしてこうした特性を活かすため、フルバランス構成のアナログ信号処理回路を組み込んでその能力を最大限に引き出すことに力を注いだ。新設計のシャーシはアンダーベースを用いて剛性を高めているが、内部を3分割し電源部、デジタル信号処理回路、アナログ信号処理回路の各ブロックを分離してノイズの低減と信号の干渉を防いでいる。

 メインの電源部からはアナログ回路にだけ給電し、デジタル回路用には別途専用の電源トランスを用意する手の込んだ作りで音質の純化に努めた。まさにオーディオマインドあふれるパイオニアらしさが随所にあふれた製品なのである。

 またこのモデルはDACのデジタルフィルターの切り替えが行えるほか、DACのロック精度を調整する「「LOCK RANGE ADJUST」(ロックレンジアジャスト)機能を設けて、それぞれの設定による音質が楽しめる。また、384kHz/32bitまでアップサンプリングが可能なオーディオスケーラーも装備している。ハイレゾ機器にアナログオーディオ的な要素があるといったのは、こうした使いこなしの幅があるということだが、鍛錬しないと振り回される一因にもなるので、この辺りの機能は腰を据えてチェックしてみたい。

背面端子

 PCからの音楽ファイル再生についてはアンシンクロナス転送方式のUSB-DAC機能を持ち、USB-A端子をフロントとリア側に設けていずれにもUSB-HDDやUSBメモリーを接続できるほか、USB-DACの入力部にはアイソレーターを加えてPCからのノイズの混入を防止している。フロントパネルに設けられた液晶の表示部も3.5インチに拡大されたのでプログラムの内容や動作状態も見やすくなった。

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