メモリーテックが新しい高音質CD「UHQCD」(Ultimate High Quality CD)を発表した。CD規格に準拠しているため、特別なプレイヤーは必要なし。既存のCDプレイヤーで再生できるうえ、価格も従来のCDと大差ないという。“Ultimate”(究極)を冠した新しいCDは、一体どういうものなのか。
高音質CDといえば、日本ビクターとユニバーサルミュージックが共同開発した「Super High Material CD」(SHM-CD)、メモリーテックの「High Quality CD」(HQCD)、ソニー・ミュージックエンタテインメントの「Blu-spec CD」などが有名だ。基本的なアプローチは共通で、従来よりも透明度の高いポリカーボネート樹脂を採用したり、反射膜に反射率の高い合金を使うことで読み取りエラーを低減、音質の向上を図った。しかしメモリーテックによると、「原材料のアップデートには限界がある」という。代わりに着目したのは、ディスクの製造工程だった。
一般的なCDは、インジェクション(射出)成形という方法でポリカーボネートにデータのピットを記録する。このとき、音源データのピットが記録されたスタンパを“金型”として使用し、高熱で溶かしたポリカーボネートを流し込んでピット模様を転写する。この手法は生産効率は高いものの、スタンパ原盤のピットを完全に転写するのは不可能だった。溶けたポリカーボネートには粘りがあり、スタンパの細かいピットの隅々まで完璧に入り込むことができなかったからだ。
メモリーテックが開発した手法では、従来のポリカーボネートではなくフォトポリマー(光硬化樹脂)を使用する。フォトポリマーは通常は液体だが、特定の波長の光を当てると固まるという特性があり、これを利用して細かいピットの「完璧な転写」(同社)を実現した。液体のフォトポリマーはスタンパの微細な溝にまで入り込み、その凹凸を高いレベルで再現。「従来の製法ではあり得ないレベルで原板を忠実に転写・再現することができた」としている。また、原板のカッティングにおいてもBlu-rayと同じ青色レーザーを使用し、一般的な高速カッティングではなく“等速”で丁寧に時間をかけて作業しているという。
「CD読み込み時のエラーレートを低減し、機器内の電流を安定させて高音質化を図るというのはオーディオ機器メーカーが普段やっていること。それをメディア――CDの側から突き詰めてみたというのがUHQCDだ」(同社)。
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