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4KプロジェクターでもHDRは楽しめる! JVC「DLA-X750R」が見せた映像設定の妙技山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/3 ページ)

» 2016年08月25日 06時00分 公開
[山本浩司ITmedia]

 テレビの国内出荷台数は4年連続で前年割れ、2016年度の出荷は490万台にとどまるという。しかし一方で、4Kテレビの実売数は好調に推移しているようだ。業界筋によると、昨年の65万台から今年は130万台へと倍増の見通しだそうで、金額構成比も全需の約6割まで伸長する見込みという。

昨年末に発売されたJVCブランドの4K対応D‐ILAプロジェクター「DLA-X750R」。価格は90万円
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 パーソナルルームではタブレットやPCでネットコンテンツなどを観て、リビングルームの大画面4Kテレビで地デジや「WOWOW」 「NETFLIX 4K」を楽しむというスタイルが定着しつつあることをこのデータは物語っているのだろう。また、これまで本欄でご紹介してきた通り、この春・夏に各社から発売された最新モデルの性能(画質・使い勝手)アップも著しく、まさに今が4K大画面テレビの買い時なのかもしれない。

 一方で100インチ以上の大画面でUltra HD Blu-rayなどの高画質メディアで映画を観たいという映画趣味人にとっては、劇場と同一スタイルのプロジェクター+スクリーンがそのターゲットになるわけだが、残念ながら昨年発売された4K対応プロジェクターでHDR (ハイダイナミックレンジ)の魅力をきちんと引き出せるモデルは存在していなかった。というか、家庭用4Kプロジェクターの最大輝度が1800lm(ルーメン)前後では、いずれにしてもHDRのよさを引き出すのは難しいのでは? という思いが個人的にはあった。

 しかし、Ultra HD Blu-rayの国内発売が開始された6月までに、JVC 、ソニーがそれぞれの4Kプロジェクターの最新モデルである「DLA-X750R」と「VPL-VW515」のHDRに対する最適画質設定ファームウェアを発表。それによって実際に得られる画質が著しく向上していることが確認でき、大いに驚かされた。とくにDLA-X750RのHDR画質の進化は目覚ましく、これなら安心してUltra HD Blu-rayなどのHDRコンテンツを楽しめると実感させられたのである。

 新たに設定されたDLA-X750Rの「HDRコンテンツ視聴設定」のポイントは2つある。1つがHDR対応ガンマである「ガンマD 」をUltra HD Blu-rayで運用されているHDR10用に最適化したこと(ピクチャートーン=12、明部補正=4、暗部補正=5、後述)、もう1つがBT.2020色域に対応したカラープロファイルの追加だ。

JVCのサイトでHDRコンテンツの視聴に適した画質設定を公開している

 まずJVCの開発陣は、発売されたUltra HD Blu-rayの映画ソフトを徹底的に精査したという。そこで得られた知見は、HDR10規格の最大輝度は、1万nits(1万カンデラ/平方メートル)と規定されているが、実際にはコンテンツの「輝度レベルの最大値」(Maximum Content Light Level)は1000nitsでグレーディングされ、しかも「フレーム内平均輝度の最大値」(Maximum Frame Average Light Level)は400nits にすぎないということだった。

 そこでJVC開発陣は、「HDRコンテンツ視聴設定」の最大輝度を400nits と規定することにし、それに合せてガンマDの「ピクチャートーン」を12に設定した。この場合、400nits 以上の明るさの信号が入ってくると映像情報が飛んでしまうが、「明部補正」を4に設定してハイライトのガンマを寝かせることで明部階調を出せるようにした。

 先述のように、DLA-X750Rの明るさの最大値は1800 lmで、この値をnits換算すると、200nits前後となる(ゲイン1の100インチスクリーンに投写した場合)。その現実を考えると、最大輝度を400nitsに想定して画質を最適化していくのは、実に合理的な手法といっていいだろう。

 一方で、JVC開発陣は暗部階調について精査したところ、当初の設定値「0」では暗部が沈んでしまうことが分かり、さまざまなUltra HD Blu-ray映画ソフトを観て最適値を「5」にしたという。

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