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» 2016年12月30日 06時00分 公開

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:「マニアック&ハイエンド」 麻倉怜士の「デジタルトップ10」(中編) (2/4)

[天野透,ITmedia]

6位:Ultra HD Blu-ray

麻倉氏:今年はUltra HD Blu-ray(以下、UHD BD)が出てHDRが出てというように、新たな概念や新世代のフォーマットが次々と実用化されました。ビジュアル業界の発展にとってエポックメイキングな1年だったと言えるでしょう。という訳で第6位にはUHD BDを挙げたいと思います。

10月に行われたCEATEC JAPANでUHD BDの魅力を解説した麻倉氏。アメリカの量販店では既にUHD BDの専門コーナーを展開する店舗もある

麻倉氏:UHD BDは昨年末に世界の先陣を切って登場したパナソニック「DMR-UBZ1」のバンドルとして、非売品の「るろうに剣心」がまず出ました。これは全体的に輝度が低かったのですが、その後の3月、4月から出てきたハリウッドタイトルは高輝度で、従来の10倍にあたるピーク輝度1000nitsの映像はこれほど違うかということが分かってきました。

 今年1年でのパッケージリリースはアメリカではおよそ100タイトル、日本ではおよそ40タイトルです。当初はソニー・ピクチャーズ、フォックス、ワーナーの3社が主力でしたが、秋からユニバーサルとパラマウントとライオンズゲートが加わり、日本ではアニメ・ドキュメンタリーといったジャンルのレーベルからも新作が投入されました。さらに12月にはユーロアーツが初めての舞台作品として「フィガロの結婚」をリリース。UHD BDのジャンルがかなり広範囲になり、ソフトとハードがそろった“UHD BD元年”といえるでしょう。

――プレーヤーに関しても昨年末に「DMR-UBZ1」が見切り発車をした状態とは異なってパナソニックが「DMP-UB900」と「DMP-UB90」で松・竹・梅のラインアップを完成させましたね。ユニバーサルプレーヤーの雄であるOPPO Digitalからは1号機「UDP-203」のリリースがアナウンスされ、その他では同社の上位機種の「UDP-205」やソニーが開発中のプレーヤーも来年(2017年)の投入が予告されています。

プレーヤーの拡充も進んでいる。昨年末にソフトよりも先に発売された「DMR-UBZ1」だけだったが、この1年でパナソニックはUHD BDプレーヤーのラインアップを一通り完成させたほか、ソニーやOPPO Digitalといったメーカーからもプレーヤーの投入がアナウンスされている。画像はIFAで披露されたソニーの試作機

麻倉氏:4K解像度とHDRのDレンジ拡大が加わって、単なる解像度向上にとどまらない映像としての表現力範囲がはるかに拡張されたことがUHD BDの良さでしょう。それを再現するためのプロジェクターやディスプレイといったモニター機器も急速に拡充中です。

 UHD BDの素晴らしさは従来的な解像度向上プラス、画質向上の新機軸であるHDRによるさまざまなコンテンツにおける感動性の向上に他なりません。その内容ですが、いろいろ作品を見ていると特徴的なものが分類できます。例えばHDR分野では「パシフィック・リム」。光が多くて輝度が高く、そこにロボットをはじめとした様々なオブジェクトの質感がのっている、HDR的効果のショールームともいうべき作品です。

 一方「バットマンVSスーパーマン」は暗所の中の光の凄まじさが強調されています。パシフィック・リムは全体が明るいのに対して、こちらは暗い中の爆発やレーザー光といったものの強烈な明るさが出ています。

 ユニバーサルの「オブリビオン」は意外にまったりした画です。4K撮影・2Kマスタリングを行ったBlu-ray Discでは、情報量が豊富で輪郭がキチッと屹立しており、「これぞデジタル映像」というもの凄い高画質が評判になりました。しかしUHD BDは更にキリリとなるかというと、意外や意外、マッタリとした柔らかいアナログ的なゆったり感が出てきました。そうなるとBDの時の鮮鋭感は何だったのかとなるところですが、4K素材をいろいろな制約で2Kにせざるを得なかったため、この時は鮮鋭感を優先したのかな、と見るべきでしょうか。となると、今回は細部の細工が取れて4Kのあるべき絵を出してきたのかもしれません。ここは賛否両論で、2K時の鮮鋭感を惜しむ声と角が取れて気持ちよくなったと評価する声が挙がっています。

――既にナカナカのタイトルが出そろっているUHD BDですが、新世代を感じさせる、あるいはスペックの進化を表現に上手く用いているオススメタイトルはありますか?

「LUCY」

麻倉氏:私のイチオシはユニバーサルの「LUCY」。クールなヒロインを撮らせたら天下一品のリュック・ベッソン監督作品、スカーレット・ヨハンソンとモーガン・フリーマンの主演による一本です。人間の脳を100%開放するとどうなるかという題材を描いたSFで、ネタバレは避けますがフィナーレがなかなかにファンタジーで必見ですよ。

 世に4K UHDタイトルは数あれど、実は“リアル4K”となると意外と少ないんです。「エクソダス」「マッド・マックス」など、多くのものは2Kからのアプコンですが、これは「F65」や「RED」といった4K(あるいはそれ以上)カメラを活用した”ネイティブ4K”作品。ともかく画質がもの凄く良いんです。ダウンコンバートで作られたBDの時も良かったですが、今回は4K+HDR効果が素晴らしく、テンションの高いコントラスト感華麗な色彩感、研ぎ澄まされた鮮鋭感のミックスが、超常的な物語を実に華やかに彩ります。

麻倉氏のオススメUHD BDはリュック・ベッソン監督の「LUCY」。香港やパリといった街並みが極彩色で彩られる本作を「HDRによる色の開放が作品のテーマである脳の開放に通じる」と麻倉氏は評した

物語的には香港からヨーロッパへ移るという作品で、各地の景色が出て来るのですが、香港の極彩色の洪水感やパリの光のバラエティ、脳内を描くCGなど、強靭で透明度の高いHDR映像が見られます。高輝度の光でも色を失わない見事なHDRで、リュック・ベッソン監督の豪華な色使いを存分に生かしていますね。通常10%しか機能していない脳が100%へ向かって覚醒し、人智を超えた超能力を発揮していくというその過程と、これまで100nitsという限界点までしか輝度を持っていなかったSDRがHDRになり、数10倍にも上る光と色の表現力を獲得したその過程は、不思議に似るものがあるなと感じました。

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