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“テレビを見ない世代”向けの番組とは?――「miptv2017」リポート(前編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2017年04月24日 20時17分 公開
[天野透ITmedia]

麻倉氏:日本では2018年からBS/110度CSによる4K/8K実用放送が始まります。放送概要に関してですが、NHKの講演で明かされたところによると4Kは1日18時間、午前6時から午前0時までで、90%をネイティブ4Kコンテンツでまかなうそうです(残りは2Kのアプコン)。8Kは1日12時間“以上”で、午前10時から午後10時“以降”まで。ネイティブ8Kは60%ほどで、残りは2Kや4Kのアプコンを予定しているようです。

NHKによる4K/8K放送のスケジュールも披露された。4Kは深夜帯のない一般放送というようなイメージ。ネイティブ4K、8Kの番組も制作する

麻倉氏:そんなNHKですが、4K制作に移り変わりがみられるようで、「コズミックフロント」の4K比率がかなり上がっているとの情報をキャッチしました。

――NHKはいままで8Kを熱心にやってきましたが、いよいよ4Kにも本腰を入れてきたという感じでしょうか

麻倉氏:2015年から4K制作を開始しており、初年度は1番組、2016年は14番組が制作されました。今年は2016年の倍にあたる28番組を見込んでおり、これを聞くだけでも4K番組の制作に力を入れていることが分かります。8Kは2016年、2017年にそれぞれ1番組ずつを予定しているそうです。

「コズミックフロント」の4K/8K制作本数

麻倉氏:全体状況はこのようになっていますが、さてコンテンツはどう作られているでしょうか。ここからは本題となる番組制作の進化をお話しましょう。

 まずはオランダのInsight TVです。2015年10月にスタートした4K専門チャンネルですが、最近かなり伸びているらしく、放送開始からわずか18カ月で全世界で3600万の視聴者を抱えています。

――3600万とはまたなかなかですね。日本に当てはめるとおよそ4人に1人が見ている計算になりますよ

麻倉氏:これだけ伸びているのには大きな理由があるんです。何といっても国際放送というのが大きく、個々の国の比率は英国がSKY経由で1200万世帯、ドイツが300万世帯、ロシアは1200万世帯、ポルトガルがVodafone経由で300万世帯、スペインが同じくVodafone経由で200万世帯、韓国がSKブロードバンド経由で300万世帯、スイスが200万世帯、UAE(アラブ首長国連邦)が衛星放送経由で100万世帯です。特長はまずディストリビューション(放送業者)を選ばないこと。OTTとBSを組み合わせ、テレビだけでなくPCやタブレットやスマホでも視聴できます。デバイスのプラットフォームも、Chrome CastやiOS、Xbox、プレステなどなどという全方位作戦です。さらに一般的なリニア放送だけでなく、サムスン製テレビ向けの定額制VOD(S-VOD)も開始しました。伝送網もデバイスも放送形態さえも選ばない柔軟なメディア作戦が功を奏しているのでしょう。

 ちょっと気になったので質問をしてみると、3600万のうち4Kは1500万くらいだそうです。でも4Kの普及がなかなか凄くて、イベリア半島や韓国、ドイツなどはほとんど4Kだそうです。意外なことにロシアは2Kが主流だとか。加えて昨年3月からはHDRも投入し、今年は年末までに7番組はHDR制作をしたいと話していました。

オランダのInsight TVは世界のミレニアル世代をターゲットに4K番組を展開する新興放送局。ヨーロッパを中心に、ロシアや中東などで視聴者を集めている
デバイス・プラットフォーム、送信網などを選ばず「とにかく見られるようにする」というのがInsight TVの大きな特長。衛星放送やケーブルテレビなどと違って間口が広く、初期導入のハードルがかなり低い

麻倉氏:内容的にも特徴があって、ミレニアル世代(注:1980年から2003年の間に生まれ、2000年以降に成人した若者世代。従来の価値観と異なるデジタルネイティブ世代として語られることが多い)をターゲットにしています。CEOのRian Bester氏によると、「この世代はターゲットとしては最も難しいが、彼ら向けのプレミアムコンテンツを作る。We push the limit.(テレビを見ない世代に向けて作る)。Wherever and whenever they want UHD.(いつでも、どこでも、望むがままにUHDを)」ということだそうです。コンテンツ内容の特長は3つ。まず「Global digital trending topic」アジアやヨーロッパといった地域を限定せず、全世界で通用するトレンドやコンテンツを集めるということで、これはスポーツが代表例です。次に「Global social influencers」要するにSNSを使ってユーザーに宣伝してもらうというもので、有り体にいえば“口コミ”ですね。テレビよりネットのほうが影響力が強い、実にデジタルネイティブなやり方です。そして「Plemium quality contents」、ヒト・モノ・カネをかけてコンテンツを作るということです。

――文化的にもこの世代の存在感が増してきたんだなということを感じます。僕を含めたミレニアル世代はインターネットが広がる時代に育ち、情報の価値やあり方が革命的に変わっていく様を見てきました。これからは“そのような価値観”が世界の中心となるのだろうかなどと思ったりもします

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