「Netflix」の日本上陸がもたらすもの:本田雅一の「TV Style」(2/2 ページ)
以前から話のあった「Netflix」の日本上陸が正式に発表された。本稿ではNetflix参入によって、日本におけるコンテンツ視聴にどのような影響があるかについて考察してみたい。
4Kも展開中、そしてHDRも
Netflixの影響力が高まっている理由は、視聴数の爆発的な増加だけではない。最新の映像技術にいち早く対応出来る点も、放送局に対して特別な立ち位置を実現している理由だ。Netflixは昨年より最新映像コーデックのHEVCを用いた4K映像の配信サービスを開始している。ネット配信専門であるが故、15.6MbpsとNexTV-Fや「スカパー!」の4K CS放送に比べると低ビットレートではあるが、米国で販売されているほとんどの4Kテレビが対応しているため、放送局が対応できていない中にあって存在感を高めている。
そして今年はいよいよ、HDR(ハイダイナミックレンジ)版の配信にも対応するとのこと。ハリウッド映画スタジオは年末に向けてHDRへの対応を進めており、とりわけワーナーブラザース、ディズニーといった大手が積極的だ。積極性はともかく、HDRをやらないと言っているスタジオは”ない”。受像機側はソニーが対応を発表済みだが、おそらくどのメーカーも同じように対応するに違いない。
放送局もHDRには対応するものの、4K放送自身がまだ本格的に立ち上がっておらず、投資規模などを考えると独自にサービスの枠組みを拡大できるNetflixは、放送局にない独自の地位を築いている。
日本でも4K配信が行われることが明らかになっており、アクトビラやNTTぷららなどの既存4K動画配信サービスなどとともに、4Kテレビユーザー向けには嬉しいサービスとなるだろう。なお、米国でのサービス料金は月額わずか8.99ドルで映画、テレビ番組とも見放題だが、日本での料金については明らかになっていない。
最後にもう1つ。日本のコンテンツ制作者にとっては、新しいビジネスモデルが見えてくる可能性もありそうだ。日本オフィスのトップ就任するGregory K. Peters氏は次のように話している。「Netflixが持つ5700万人以上の会員に、日本の人気映画やテレビ番組を配信することも可能になる」。
発表時にわざわざ、海外コンテンツを持ち込んで日本で配信するだけでなく、海外で日本のコンテンツを観てもらうチャンスですよ、とメッセージを発信しているのは、クリエイターやコンテンツオーナーに対して強い興味を抱いているからだろう。
日本の映像コンテンツは、欧米市場への販売で苦戦している。日本製コンテンツの代表とも言えるアニメ作品も、子ども向け番組では根強い人気があるものの、近年急増した大人向けの深夜アニメなどは、海外に該当する放送枠がないためアニメ専門のネット配信サービスに登録する一部のファン向けに閉じてしまう傾向が強い。
そうしたアニメの多くは製作委員会制で、かなり多くの”紐”が付いているため、既存の枠組みでの調整にはそれなりに高いハードルがあるかもしれない。しかし、文化的にニュートラルな作品であれば、映像ビジネスの幅を拡げる場となるだろう。
”Netflixありき”でビジネスモデルを考えた時、日本のコンテンツにどのような可能性が広がるのか。海外に拡がる5700万会員に通じるチャネルとして捉えれば、今とは違った作品作りの枠組みも考えられるだろう。
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