4K/HDRテレビの新基準「ULTRA HDプレミアム」ロゴの意味、そしてパナソニックの「DX900」シリーズ誕生の背景:CES 2016(2/2 ページ)
パナソニックがCESで「ULTRA HDプレミアム」ロゴプログラムの仕様に準拠する4K/HDRテレビを発表した。そもそも「ULTRA HDプレミアム」ロゴとは一体何なのか? 対応製品には何が求められるのか、詳しい話を聞いた。
色再現はDCIで90%以上のカバー率、パナソニック「DX900」シリーズ
パナソニックの「DX900」シリーズは、このような経緯で誕生した「ULTRA HDプレミアム」ロゴを世界ではじめて冠する4K/HDRテレビだ。こちらもCESで発表されたUltra HD Blu-rayプレイヤー「DMP-UB900」と同じく、北米のイベントで発表された製品だが、ベースは欧州向けになる。インチサイズは65型と58型の2モデルで価格はそれぞれ未定だが、「欧州市場の早い地域では来月から出荷が始まる予定。出荷のタイミングベースでも“世界初の4K/HDRテレビ”になるはず」と小塚氏、東田氏は口をそろえる。
HDR対応について、東田氏は「最高輝度が1000nitsを超えており、黒輝度も0.05nitsよりも低い数値。色再現はDCIで90%以上のカバー率を実現している」と語る。LEDバックライトの配置は直下型で、最新のハニカム構造のローカルディミング技術により、高域の輝度を高め黒色を引き締める。東田氏はまた「1000nits以上の最高輝度を得ることは難しいことではないのですが、ピーク輝度を過度に高く設定することでかえって画面が眩し過ぎて映像がみづらくなるという実験のフィードバックもあります。むしろ大切なのは画づくりの方であり、“ULTRA HDプレミアム”ロゴプログラムの要求仕様を満たした上で、最も心地良く4K/HDRの映像のメリットを実感いただけるように最高輝度・黒輝度のバランスを調整しています」とし、DX900シリーズのトータルバランスを重視した画質設計のこだわりを説いた。
また、アライアンスのメンバーであるNetflixでは、今後4K/HDRの動画配信をDolbyVision方式をベースに提供していく方針を打ち出しているが、DX900シリーズの対応を小塚氏に訊ねてみたところ「現時点で詳しいことはお伝えできないが、開始時にはすぐに対応できるだろう」という回答を得た。
プレスカンファレンスの速報でお伝えした通り、DX900シリーズは映像プロセッサーのチップセットに、欧州で先行発売した有機ELテレビに搭載する「4K Studio Master」の好評を得て、これをベースに改良を加えた「Studio Master HCX+(Hollywood Cinema eXperience plus)」を搭載する。液晶パネルの品質差によって生まれる画質低下を避けるための3Dルックアップテーブルによる補正システムは、通常のテレビの40倍にも至る8000ポイントを参照しながら緻密な補正をかけているという。さらに高精度な色補正アルゴリズムによる、正確な色再現を実現した点も特徴だ。
今回の説明をいただいたプライベートセミナーの特設会場で65型の「TX-65DX900」に“DIGA”のフラグシップ「DMR-UBZ1」の組み合わせによる映像を視聴する機会を得た。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などをはじめ、4K/HDR収録された映画のトレーラーを複数収録したデモコンテンツでは、驚くほどにイキイキとした立体感あふれる映像が再現されていた。映像の明るい部分については、例えば炎は今までのテレビであれば白一色に近くなってしまっていた所が、オレンジや黄色の色彩が見えてくるようになる。また映像の暗部も実に深く沈み込み、被写体の解像感が高まることによって、あたかも3D映像のような立体感が際立ってくる。かつての2K時代の3D映像は帯域が足りなかったので、情報量がより多く得られる4K/HDRの場合はさらに自然な立体感を表現することができるのだと小塚氏は説明する。被写体の色合いが鮮やかに蘇ってくることにより、質感もリアリティを増してくる。
なお音声についてはネオジウムマグネット採用のスピーカーユニットが搭載され、薄型ながら迫力あるサウンドがテレビ単体でも楽しめることを特徴としている。テレビ向けスマートOSは引き続きFirefox OSが採用される。
気になる日本展開については、「今回紹介した欧州向けDX900シリーズに相当するモデルの開発を進めています」と東田氏は力強くコメントしてくれた。近く詳細のアナウンスがあることを期待して待ちたいと思う。
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