スマート家電に“ココロ”をプラス シャープのAIoT戦略をひもとく(3/3 ページ)
シャープはAIとIoTを結びつけるという考え方からスマート家電とそのサービスの開発に力を入れている。既に「ココロ」をプラスした家電は8種類を数え、5つのクラウドサービスも提供している。同社の戦略をひもといてみよう。
他社製品をAIoTプラットフォームの中に取り込むことはできるのか
スマート家電は今、国内・海外の家電メーカーが力を入れて取り組むカテゴリーだ。各社にとってスマート機能は他社製品との差別化を図るための有効なファクターでもある。そのため、技術の中核部分がブラックボックス化されたままでは、他社製品との連携による大きなプラットフォームができあがらないのではと、ユーザーなら気がかりに感じるだろう。わが家をスマートホーム化したくても、スマート家電を一気に単独のブランドで買い揃えたり、買い直したりするわけにはいかない。現状、スマート家電による豊かな暮らしのイメージがなかなか具体的にわいてこない理由の1つに、「単体の家電をスマホで動かせること」以上の価値が見えづらいことも挙げられる。
シャープでは、AIoTによるスマートライフを自社製品の枠を超えて提供するためのプラットフォーム作りにも力を入れているという。ここは今回のインタビューで中田氏が特に強くアピールしていたポイントの1つでもある。第一段階として、互いに声を掛け合って連携できそうなパートナーに対して、クラウドサービスのWeb APIを提供しながら連携と拡張を柔軟に図っていく仕組みを整えた。
「スマート家電とクラウドサービスを持っているメーカーが単独で音頭を取ってアライアンスを立ち上げても、うまく行かない場合もあると考えています。とはいえユーザーの視点から考えればスマート家電の連携はできた方が当然便利だし、製品とサービスを通じてできることは一気に広がります。シャープではパートナーにWeb APIを提供する形で連携を深めながら、着実にプラットフォームの足場を固めていきたいと考えています。また異なるメーカー間での連携については、国が主導するスマートIoT推進戦略に従ったプラットフォーム作りにもシャープとして積極的に参加していきます」(中田氏)
もう1つは汎用性の高い赤外線センサーを活用して、機器連携を広げていく方法だ。現在開発中のロボット型ホームアシスタントには赤外線センサーと温湿度センサーも組み込んで、音声入力やスマホアプリからのコマンドを受けて、赤外線でテレビやエアコンにリモコン信号を飛ばして操作する仕組みも検討中だ。国内でスタートしたスマートホームのサービスも既にいくつかのプラットフォームが赤外線コマンドによる機器連携を採用している。今後プラットフォームが共通化されるまでしばらくの間は赤外線センサーが媒介としての役割を果たすことになるのだろうか。
今年の秋から国内でもサービスがスタートしたGoogleアシスタントやAmazon Alexaなど、スマートスピーカーとの連携については、既にシャープも積極的な姿勢を打ち出している。「音声インタフェースは入口・出口をどのような製品が担っても、最終的にシャープの製品とサービスならではの魅力がユーザーに伝われば構わない」というのが中田氏が示すシャープの見解だ。現在、Amazon Alexaのプラットフォームではココロプラス対応家電を音声で操作できるスキルが配信され、「COCORO KITCHEN」ではおすすめメニューの確認や献立相談、「COCORO AIR」ではエアコンや加湿空気清浄機の運転操作ができる仕組みが整っている。
シャープは今後もBtoB向け対海外向けの展開にも力を入れてAIoTのプラットフォームを広げていく。中田氏は「シャープとして、今後スタンダードモデルにも広く対応機器を増やしながらオープンに価値を提案していきたい」と意気込みを語った。来年もまたシャープからどんな製品が出てくるのか楽しみだ。
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