最近、コーラ売り場が元気だ。日本の炭酸飲料市場のうち、約半分を占めるコーラ商品。話題の中心になっているのは、定番のレギュラーコーラ(砂糖入りコーラ)ではなく、ノンカロリーをうたったコーラで、新製品が続々登場している。
コーラ市場は「コカ・コーラ」「ペプシコーラ」の2大ブランドが圧倒的に強い。日本の場合、先行するコカ・コーラを、サントリーのペプシコーラが追う図式だ。
ペプシコーラのラインアップ中、今年もっとも販売数量が多い主力商品が、3月27日に発売された新商品の「PEPSI NEX(ペプシネックス)」。0カロリーながら“ダイエット”とも“ゼロ”とも付かない製品だ。登場してまだ3カ月だが、すでにペプシネックスの販売量はレギュラーペプシを超えている。
従来はレギュラーコーラが「主」なのに対し、低カロリー/ノンカロリーコーラは「従」の関係にあった。ノンカロリーのペプシネックスを主力商品に据えたのには、どのような狙いや市場の変化があったのか? サントリーでペプシネックスの企画を担当する石原圭子さんに話を聞いた。
取材前に記者もペプシネックスを飲んでみたのだが、「炭酸が強い」「パンチがある味」「低カロリー甘味料っぽい味があまりしない」という印象だった。これまではダイエットコーラを飲むたびに「味はマズイけど、カロリーがないのだから仕方ない」と思っていたのだが、ペプシネックスにはそういう意味で“ノンカロリーコーラっぽさ”をあまり感じない。
石原さんによれば、これは一般的な反応なのだそうだ。「ダイエットコーラには、“すっきりしているが水っぽい”というイメージが付いてしまっていることが多く、『カロリーがないのはいいけれど、味が今ひとつ』という印象を持っている人が多いのです。そこでペプシネックスでは、“0カロリーだけどおいしい”という製品であることを打ち出すために、ダイエットと銘打っていません」
“0カロリーだけどおいしい”コーラ――しかし改めて考えてみると、コーラのおいしさとは何で決まるのだろうか? 「コーラのおいしさを特徴付けるのは、大きく3つの要素だと思っています。1つは高ガス圧(炭酸の強さ)。1つはカラメル特有のコク。そしてカフェインです」(石原さん)
ペプシネックスではこの3つを満たすような商品作りを心がけた。また0カロリーにするために、ペプシネックスでも通常の砂糖ではなくゼロカロリー甘味料を使っているが「甘味料はどうしても、べたっと甘い感じがして、後に残るように感じる人が多いのです。ペプシネックスでは甘味料独特のこのクセを、うまくマスキングしています。また、隠し味としてレモンがちょっとだけ入っています。レモンを入れることで、味の厚みを出せるんですね。ただ、あまり入れすぎてもフレーバーコーラになってしまうで、本流のコーラとして勝負するために、そのへんは加減していますけれど」と石原さんは話す。
日本コカ・コーラはノンカロリー製品を男性向け、女性向けに分けているが(記事末のコラム参照)、ペプシネックスは、特に男女を分けたターゲティングはしていない。「女性も飲んでいただいているようで、うれしいですね。黒で男性的な印象を受けるパッケージですが、男女を問わず支持されています」
“ダイエット”“0カロリー”と冠さなかった理由は何だろうか。話を聞くと、コーラを最も良く飲むボリュームゾーンが20〜30代の男性であるという点にも関係があるようだ。「最近の傾向として、コーラ全体の市場規模が縮小している中で、0カロリーコーラのカテゴリは伸びています。背景にあるのはやはり、健康意識の高まりだと考えています。“砂糖が入ったレギュラーコーラには手を出しにくい”“太るのが心配”と考える人が増えていますよね。でも、レギュラーコーラは飲めなくても、0カロリーなら飲んでみようかな、と考える人は多い。だからこのカテゴリが伸びているのだと思います。
“ダイエット”と付けなかったのには“こちらが本流”という気持ちがありました。0カロリーだけど従来のダイエットコーラではない、これが主流、という意識です」(石原さん)
サントリーの狙いは当たったようだ。ペプシネックスは発売2カ月で300万ケース、6月現在累積で900百万ケースを突破するなど売れ行きは非常に好調。同社では「0カロリーコーラ飲料市場でほぼ半分を超えるシェアを獲得した」と見ている(参照リンク)。
もう1つペプシネックスの特徴といえるのが、日本独自の商品という点だ。日本にしかない商品だが、しかし国内では「ペプシの顔」といえるブランドに育てていく考えだ。
またペプシでは初めて、CMに日本人タレントを起用した。「ペプシネックスは、日本のお客さんにとって魅力的なブランドを1から作りたい、という気持ちがあってできたものですから。“0カロリーなのにおいしいじゃん”というメッセージが伝わったのでは」(石原さん)
しかしコーラの商品ブランドは、各国で共通にするほうが一般的で、“日本だけのブランド”を前面に打ち出す例は珍しい。「日本の飲料市場は非常に特殊なんです。ものすごく細かくセグメントされている。その中でコーラが生き残っていくことの難しさは、本国も理解してくれています」
上述の通り、日本のコーラ市場は先行するコカ・コーラをペプシが追う形になっている。サントリーのペプシ開発チームには、楽しさやチャレンジ精神を重視する気風があるという。「チャレンジングなこと、発想が自由というイメージはありますね。今までにもペプシレッド、ゴールド、カーニバルといった期間限定商品を作ってきましたが、今年の“ペプシアイスキューカンバー”(6月9日の記事参照)も、そういう考えの現れだと思います。“ペプシは面白いことをやってるんだよ”というのを、これからも発信していきたいですね」
コーラ市場は「コカ・コーラ」「ペプシコーラ」の2ブランドしか主力プレイヤーがいない、珍しい市場だ。米国などではコカ・コーラとペプシコーラのシェアが拮抗しているが、日本でのシェアは現在8対2程度と、コカ・コーラが強い。
日本コカ・コーラは2007年4月に「ノーカロリー コカ・コーラ」を、6月に「コカ・コーラ ゼロ」を発売、通常のコカ・コーラを合わせて3商品を中心とするラインアップを展開中だ。日本コカ・コーラではノーカロリー コカ・コーラ(銀色のパッケージ)を女性向け、コカ・コーラ ゼロ(黒いパッケージ)を男性向け製品と位置づけており、いずれも0カロリーのコーラとなっている。
現在日本のペプシコーラは、サントリーがマスターフランチャイズ権を得て、1998年以来ペプシコ社に代わって製造・販売を行っている。2007年現在、ペプシのラインアップはレギュラーのペプシコーラのほか、「PEPSI NEX(ペプシネックス)」「PEPSI Twist(ペプシツイスト)」「ダイエットペプシ」の合計4製品となっている。
商品名 | 販売量 |
---|---|
ペプシネックス | 900万ケース |
ペプシコーラ(レギュラー) | 720万ケース |
ダイエットペプシ | 120万ケース |
ペプシツイスト | 250万ケース |
その他単発製品 | 60万ケース |
合計 | 2050万ケース |
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