プラズマの松下 VS 液晶のシャープ、株はどっちが“買い”?投資特集「銘柄分析」

» 2007年07月13日 17時41分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 プラズマテレビ世界シェアトップの松下電器産業(証券コード6752)、液晶テレビで他社を圧倒するシャープ(6753)。2007年3月期決算では両社とも2ケタ成長を遂げているが、チャートを見る限り松下電器産業の株価がやや冴えない。2006年4月の高値(2870円)から反落し、2080円〜2670円で推移している。一方のシャープは、2007年4月の高値(2445円)から5月に調整したものの、再び高値更新の見方が強い。

 米調査会社ディスプレイサーチによると、2007年第1四半期の液晶テレビ出荷額は対前年同期比54%増で出荷台数も98%増と好調。対するプラズマテレビの出荷額は−28%(同)、出荷台数も−37%と低迷した。2006年は37型以上の大画面テレビ市場でも、初めてプラズマと液晶の地位が逆転した。

 「株価は両社のテレビ需要を反映している」と分析するのは、モーニングスター調査分析部の保坂昇シニアアナリスト。シャープは米国などから引き合いが旺盛で、液晶パネルの増産体制が続いている。特に利益率の高い40型以上の液晶パネルで攻勢を仕掛ける方針だ。「大型テレビ=プラズマ」という公式が崩れ、液晶テレビの大型化が進んでいる。受けて立つ松下だが、「製品価格の下落が収益を圧迫するのではないか」と指摘する。シャープと松下――両社の株は「買い」か「売り」か。今後の株価動向を予想してもらった。

アナリストレーティングでは「強気」のシャープ

モーニングスター調査分析部の保坂昇シニアアナリスト

 2008年3月期の決算でシャープは、経常利益3%増を予想している。しかし市場関係者は「上方修正を期待している。関係者の予想を上回れば、さらに株価は上昇するかもしれない」と見る。

 同社のアナリストレーティング(株式の推奨度を5段階に分類)では、5段階で上から2番目の「強気」と判断、その理由として2つを挙げている。採算が良い大型液晶テレビのシェアが拡大すれば、株価にとっては好材料だ。1つは売上増。「亀山工場では大型液晶テレビの効率的な生産を可能にしており、割安な機種を投入すれば売上増につながるだろう」。もう1つの理由は海外シェアのアップで、米国や中国などが好調だ。

シャープの株価チャートシャープの株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

 その一方、液晶テレビも価格の下落が懸念材料だ。2007年第1四半期では対前年同期比−22%で、プラズマテレビと同じように収益圧迫の要因となっている。さらに海外シェアは欧州で伸び悩んでおり、今後も低迷を続けるようなら株価に影響が出るかもしれない。

松下も「強気」だが、今後は「中立」か

 松下のアナリストレーティングは「強気」で、シャープと同じだ。「しかし、今後は1つ下げて『中立』になる可能性が高い」と指摘する。2008年3月期決算の予想では経常利益は5%増だが、「市場関係者の間では上方修正が織り込まれておらず、増益率の鈍化が続くかもしれない」という。

松下電器産業の株価チャート松下電器産業の株価チャート(1年:縦軸の単位は円)

 液晶テレビ同様、プラズマテレビも価格競争が激化しており、採算の悪化が避けられない。松下はシェア重視のため、これまでプラズマテレビの価格を下げてきた。「価格が落ちついたところで“収穫期”に入る予定だった。だが液晶テレビの大型化によって、さらに価格を下げなければならない」と厳しい環境に直面している。

 市場関係者は米国のシェアを、投資判断の大きな材料としている。「株価の動向から判断して、米国のシェアが予想以上に落ち込んでいるのかもしれない。そうなると株価への影響は大きいだろう」と分析する。

 現時点(7月13日)で判断すると、シャープの株価の方が期待できそうだ。「高い技術力を持つシャープはプラス要因だ。中長期的には、投資妙味の高い銘柄」に指定している。

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