2007年夏、こんな暑中見舞いが“いいセンス”?

» 2007年08月10日 19時35分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 知人友人にハガキを書くといえば年に2回、年賀状と暑中見舞いだけ……という読者は多いだろう。年賀状より優先順位が低い、という人も少なくないが、暑くて気力も萎えがちなこの時期、暑中見舞いを受け取るのはうれしいものだ。

 しかし昨今はメールが普及し、「お久しぶり」と挨拶をするのにペンを手に取りハガキに文字をしたためる機会は減りつつある。そんな“手紙離れ”が進む中、郵政公社が2006年から販売している新しいハガキ「e−センスCard(いいセンスカード)」をご存じだろうか。

“いいセンス”のカード

キユーピー(左)と不二家(右)のe−センスカード。企業ロゴも入っているが、デザインを邪魔しないように配慮している

 e−センスCardは、きれいな風景写真やかわいらしいキャラクターなどを裏面全面に配したポストカード。現在17デザインが販売されている。

 文具店などでよく、きれいなデザインのポストカードを1枚数百円で販売しているが、あのイメージに近い。ただし、価格は50円と官製はがきと同じ。市販のポストカードだと、自分で切手を買って貼らなくてはならないが、e−センスCardの価格には切手代も含まれる。

 市販のポストカード相当のものを官製はがきと同じ値段で出せるのは、デザイン部分のコストを企業広告として賄っているからだ。図柄の中に企業名は入っているが、デザインとして自然なので、“広告っぽさ”は薄い。

 「ペコちゃん」「リラックマ」「キユーピー」などの人気キャラクターのカードは特に人気が高く、Yahoo!オークションなどを見ると、一部のカードは定価の10倍近い値段で取引されていることもある。広告商品にプレミアが付くというのも珍しい現象だ。

現在発売中のe−センスCard、17種類。キャラクターモノは特に人気が高い(クリックすると全種類を表示)

“メール感覚”で書ける?

e−センスCardの宛名面。メッセージを書くスペース(青い部分)が狭いのが特徴だ

 デザインのコストを企業の広告費で賄っていることに加え、もう1つの特徴が、宛名を書く面のデザインだ。通常の絵はがきでは、宛名を書くエリアと文面を書くエリアは半々になっていることが多いが、e−センスCardでは文面を書くエリアがかなり狭い。字が大きい人なら一言二言メッセージを書いたら埋まってしまう。

 「一言だけ書いて送れる、というのが特徴なんです。文字を書くところが広いと、『いっぱい書かなきゃ!』と身構えてしまいますよね。書く場所が小さいほうが気楽に送れるだろうと思って、面全体の3分の1程度に抑えました」(郵政公社手紙コミュニケーション部)

若い女性の“手紙離れ”を食い止めたい

 e−センスCardは、2006年から販売を開始した新しい商品だ。郵政公社がこういった商品に力を入れる背景には、日本人の手紙離れが進んでいるという事情がある。「e−センスCardには、若年層の手紙離れを食い止めるための販売強化製品という側面があります。文字を書くスペースが狭いのも、若い人に気楽にハガキを書いてほしい、という狙いがありますし」(同上)

 主なターゲットは、10代〜20代の若い女性だ。「女性を中心に、絵はがきを買ったり、集めて飾る人が増えています。そこで(郵政公社が)デザインのいいポストカードを出したら面白いんじゃないかという案が出たのがきっかけです。また、企業にスポンサードしてもらうことによりデザイン代を出せますから、切手代だけで商品を売ることができ、お得感を出せる」(同上)

 ちなみに現在販売されているのは6月18日に発売した「e−センスCard 第5弾」で、15社・17デザインのカードが8月17日まで販売される。発行枚数は各デザイン2万枚ずつ、合計34万枚。全国39局の郵便局で販売されているほか、郵便振替を使って家の近くの郵便局に取り寄せたり、代理店を通じて通信販売で購入したりするなどの入手方法もある。

 広告を出稿する場合、費用は1デザインにつき2万枚で60万円。デザインは公募で、選考の後に販売されるかどうかが決まる。

無料ポストカードの元祖・アドカード

 企業広告を利用した無料ポストカードでは、元祖といえるのが「アドカード」を配布する、有限会社のアドカードだ。1997年3月からアドカードの配布をスタートし、今年で10年目になる。現在ではカードだけでなく、広告付きのブックカバーやしおり、コースターなども手がけており、e−センスCardの販売代理店業務も行っている。

 アドカードのメインターゲットは20代〜30代女性。首都圏約500カ所を含む、全国10都市1300カ所で無料ポストカードを配布している。配布場所は主に、カフェや単館上映の映画館など。最近ではより若い層の顧客を開拓するため、大学でカードを配布するなどの試みも行っている。こちらに出稿する場合は、20〜30万円で1万枚程度だ。

 アドカードは無料で配布しているものなので、e−センスカードとは違い、50円切手を貼って投函することになる。「アドカードとe−センスカードは広告付きで無料になるポストカード、という点では同じです。ただe−センスCardのほうがどうしても、デザイン上の制限は厳しい面があります。(50円で送れるよう)形を変えたりはできないですし。AD CARDでは変形サイズのほか、ステッカーなどもやっています」(アドカード)

 シンプルなハガキに近況をつづるのもいいが、デザインの優れたカードに一言だけメッセージを添える暑中見舞い・残暑見舞いというのもいいアイデアだ。今年はe−センスCardやアドカードで“夏のごあいさつ”をしてみてはいかがだろうか?

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