野菜を担保に融資が受けられる、ABLとは?

» 2008年01月23日 17時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 銀行から融資を受ける際、通常は土地や建物などの担保が必要で、さらに保証人を付けて、お金を借りなければならない。例えば個人が住宅ローンを契約する場合でも、土地や建物に抵当権が設定される。しかし「野菜」や「醤油」などを担保にして、銀行からお金を借りることができることを知っているだろうか?

 札幌市に本店がある北洋銀行は商工中金と協調して、野菜を作る農家集団「余湖農園(よごのうえん)」に対し、野菜を担保に4000万円の融資枠を設定した。減農薬や無農薬野菜を作っている余湖農園は、消費者や事業者と直接取引をしているため、銀行からの融資を希望していたという。

 また商工中金の熊本支店では、醤油や味噌を製造している「浜田醤油」に対し、醤油などを担保に1000万円の融資枠を設定している。創業1887年(明治20年)の浜田醤油は、「卵かけごはんにかける醤油」など加工醤油を開発してきた。醤油などを担保にして調達した1000万円は、運転資金として活用する。

健全経営が融資の条件

 野菜や醤油などモノを担保にした融資は、流動資産担保融資(ABL:Asset Based Lending)という手法を活用したものだ。ABLとは不動産などを担保にせず、企業の事業そのもに着目し、資産の価値に応じて融資枠を設定するというもの。

 すでに米国では、モノなどを担保にした融資手法が普及している。日本の金融機関は企業に融資する際、不動産や保証人に依存してきたが、バブル崩壊後は土地や不動産価格の下落もあって見直す動きが出ていた。

 金融庁は「地域密着金融の機能強化の推進におけるアクションプログラム」で、担保や保証人に過度に依存しない融資手法として、ABLの事例を取り上げた。そして2005年10月には「動産譲渡登記制度」がスタートし、金融機関ではモノなどを担保にした融資が始まっているのだ。

 すでに楽器やワイン、おかき、ズワイガニなどが担保となり、企業は資金を調達している。商工中金では「融資を実行する条件として、企業が販売ルートを確保していることと、健全経営であること」を挙げている。

余湖農園が利用したABLのスキーム図

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