“男性が花を買う”需要をネットで喚起――日比谷花壇・川西啓太氏EC最前線インタビュー(2/2 ページ)

» 2008年03月31日 12時00分 公開
[吉田卓司,Business Media 誠]
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関西、九州でエリア密着型のサイトを立ち上げ

吉田 よく聞く話なのですが、そういう情報を提供すると、「ネットの売り上げが店舗に行ってしまい売り上げが減る」と心配する人は出てきませんでしたか?

川西 それは大丈夫でした。お客様にとって、より使いやすいサイトになることが第一ですから。店舗かネットかということではなく、むしろ全国にリアル店舗を持っていることが私たちの(他サイトに対する)差別化ポイントだと思っています。

吉田 差別化のためにどんな施策をされていますか。

川西 例えば、エリア密着型のサイトです。関西、九州では、全国の店舗を拠点とする情報サイトを立ちあげました。

吉田 珍しい取り組みですね。エリアサイトを立ち上げた狙いは何ですか?

川西 リアル店舗でもネットでも都市部以外は日比谷花壇の知名度がまだまだ低いのが実情です。そのためには、各地方からの情報発信力を高めて認知度をアップさせる必要がありました。そのような目的でメディアを立ち上げたのです。

吉田 東京や大阪を本社にしているネットベンチャーにはなかなか思いつかない施策ですね。どんなコンテンツがあるのですか?

川西 地域に密着した、花と緑に関する情報コンテンツを定期的に提供しています。地域の花の見所や花の生産地、シーズンの花、花を楽しむポイントなどを紹介し、地域独自のコンテンツを開発しています。

吉田 効果はいかがですか。

川西 時間はかかりましたが、着実に効果が上がってきています。エリアサイトを作ったおかげで九州では地元雑誌に取り上げられたりしています。各地方での営業の側面から言っても効果のあるメディアになっていると思います。hibiyakadan.comとの相互流入もあり、お客様とのコミュニケーションがより深まっていると思います。

吉田 地方に店舗という受け皿がある場合、ネットとリアル両方で効果がありそうですね。こうしたWebからの店舗誘導はほかに何かされていますか?

川西 どうやったらhibiyakadan.comにきたお客様を店舗に誘導できるのか、というのがリニューアルの大きな課題でした。来店予約や店舗クーポンなど、来店を促す仕組みを実施しています。今後もこうした店舗とネットの相互関係は強めていきたいと思っています。

九州エリア向けサイト「花Cafe九州」(左)と関西エリア向けサイト「Hana Iro Kansai」(右)

アフィリエイト、コーブランドでサイト集客

吉田 ネットから店舗ばかりでなく、店舗からネットへの誘導効果も大きいと思いますが、ほかに、御社のサイト集客で効果のある手法や工夫があれば教えてください。

川西 あれば逆に教えてほしいというのが正直なところです(笑)。いろいろな方にいろいろなお話を聞いていますが、皆さん行き詰まっていると感じます。アフィリエイトで自社サイトにリンクを貼ってくれている提携サイト(個人ブログなど)が1万サイトくらいあるのですが、これはまだ伸ばせる1つの手段だと思います。個人の発信力を生かして、日比谷花壇の商品を知ってもらう、という取り組みですね。大手ポータルなどにバナー広告を出すなど、広告回りでやれることはほとんどやってきましたが、今は広告の出し方には慎重になっています。

吉田 今は集客を高めるよりも、集めたユーザーからの売り上げ最大化に力を入れているということでしょうか。

川西 そうですね。広告はやらなくていいということではないですが、今は、それよりもサイト内部の最適化が優先順位として高いですね。サイトの内の改善ができれば、お客様にもより快適にお買い物をしていただける。そうやって売上を拡大していきたいですね。

hibiyakadan.comでは、リンクシェアのアフィリエイトプログラムを使って、個人サイトへのアフィリエイトを提供している。ユーザーは商品画像やバナーへのリンクを貼り、コミッション料を受け取ることができる

コーブランドへの取り組み

「コーブランド・パートナーシップ・プログラム」という名称で、花のショッピングサイトを他社とダブルブランドで運営するソリューションを提供している。JALやDCカードなどでは、会員用限定コンテンツという形で展開

吉田 御社はアライアンスで有名ですが、このあたりの取り組みはいかがですか?

川西 よくご存知ですね。「コーブランド」といいまして、現在約200数十社と提携を結んでいます。

吉田 運用されている人数と、具体的な取り組みを教えてください。

川西 30人の事業部のうち4人がこの提携関連業務を行っています。コーブランド(Co-brand)とは「ブランドを共にする」という意味です。アライアンス先の大切なお客様のメリットを考えた上、フラワーショッピングサイトを開設し、花と緑の情報を活用して「サイトにお客様を誘導すること」を目的としたプログラムです。「お花にまつわるサービス」を日比谷花壇がトータルにサポートするメカニズムを導入することができます。また、各パートナー様に、オリジナルの特集コーナーや商品などを提供し、販売をしていただいたりしています。

吉田 今後も拡大される?

川西 もちろん拡大はしていきます。ただし、今後は今まで以上に、1社ごとに深い取り組みをしていきます。

吉田 最後に今後の課題や展開を教えてください。

川西 詳細はお教えできないのですが、例えばRSSをもう一回やろうと思っています。競争も激しくなっているので、ベンチマークを見据え、“とにかくやってみる”ことを大事にしたいと思います。今のうちに足腰をきちんときたえておかないと10年後太刀打ちできなくなる、という危機感を持って取り組んでいきます。

吉田 ありがとうございました。

筆者より一言……日比谷花壇の2つの差別化ポイント

 いかがでしたか? 日比谷花壇さんには大きな特徴が2つありました。エリアマーケティングも含めたリアル店舗の活用。そして、アライアンスを中心としたマーケティングです。

 特にリアル店舗との連携については、いち早くネット通販に参入し成功している同社であれば、ネットと店舗を融合した次なる成功モデルになる可能性が高いのではないでしょうか。今後はこうした、“店舗とネットのシナジー”が1つの大きなテーマになると筆者は考えています。

吉田卓司:2000年にオイシックスを創業。代表取締役副社長として感動食品専門スーパー「Oisix(おいしっくす)」を日本でもトップクラスの食品ECサイトに育てた。現在はECコンサルティングを行っている。2007年7月、Oisixでの7年間のEC実業で培ったノウハウをもとに、企業向けに最適なECソリューションを提供する会社「オイシックスECソリューションズ」を設立した。


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