お金の面からビジネスを理解する――「ROE」「ROA」って何?経営いろは(第1回)(2/2 ページ)

» 2008年04月09日 10時20分 公開
[GLOBIS.JP]
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ROE、ROAは「インプットとアウトプットの比率」という単純なもの

 インプットとアウトプットを、お金の大きな流れを見ながら確認していきましょう。

テレパーツ社の貸借対照表

 テレパーツ社は、天野さんの出資金5億円と安岡さんの融資2億円とで資金を調達しました。これを全額、テレパーツ社の活動に必要なものを得るのに使います。例えば、事務所や工場の建物、機械設備といったものです。

 ここまでを表現したのが、上の図にある貸借対照表です。ポイントを絞り込むために単純化しています。

 貸借対照表では、株主のお金を「純資産」(純資産には厳密には新株予約権や少数株主持分などを含みますが、ここでは便宜上、省略のうえ話を進めます)、債権者のお金を「負債」、テレパーツ社の活動に必要なものを「資産」と呼びます。

 次に、テレパーツ社は、得た資産を活用して1年間活動し、売上げを稼ぎ出します。売上げから、事業活動にかかった費用を差し引きます。例えば原材料の購入費、光熱費、人件費、安岡さんへの支払利息などです。売上げから費用を引いて残ったものが、テレパーツ社の通常の事業活動からの利益で、「経常利益」と呼びます。さらに、臨時的な利益や損失、税金を差し引いて残るのが、「当期純利益」です。これが天野さんへの配当や将来の成長の資金源となる部分です。売上げから「当期純利益」にいたるプロセスを表現したのが、損益計算書です。

 さて、テレパーツ社のインプットとアウトプットは、何でしょうか。株主の天野さんにとっては、自分の出資した5億円がインプット、自分への配当や将来の成長の資金源(つまり、当期純利益)がアウトプットです。このインプットとアウトプットの比率当期純利益÷自己資本(ここでは純資産と等価、一般には株主資本に評価・換算差額を加えた額を用いる)を、ROE(Return on equity、自己資本利益率)と呼びます。

 資金提供者全体の立場から見ると、どうでしょうか。株主の森田さんと債権者の安岡さんの2人分を合わせたインプットは、純資産+負債の7億円です。この額は資産に等しくなります。これに対して、アウトプットは安岡さんが受け取る利息の資金源である経常利益+支払利息となります。このインプットとアウトプットの比率、(経常利益+支払利息)÷資産をROA(Return on Asset、総資産利益率)と呼びます。

 以上のように、ROE、ROAの本質は、「インプットとアウトプットの比率」という、ごく単純なことです。ROE、ROAに限らず、会計にはルールが多くて難しい、とりつきにくい、というイメージがあるようです。その理由は、とりつきにくい用語があることと、多様な現実を網羅するために細かいルールや例外が数多くあることによります。

 しかし、会計のフレームワークは、本来、広く誰でも理解できることを目的として作られたものです。この点でも、地図と似ています。従って本質に絞れば簡単なことなのです。会計を学ぶには、最初はあまり細部を気にせず、「本質は何か」「ビジネスにおける意味合いは何か」を意識して、大枠から理解していくことが肝心です。

 次回は、財務諸表について説明します。

※本記事は、グロービス・オーガニゼーション・ラーニングが発行するメールマガジン「グロービスNews」の2002年6月26日号に掲載されたものを、2006年5月の新会社法施行を踏まえ、加筆修正のうえ再掲したものです。

グロービス・オーガニゼーション・ラーニング(Globis Ogranizational Learning)

グロービス・グループの組織開発・人材育成部門。年間約250社に及ぶ顧客企業の人材育成を通じ、組織の変化適応力の向上と持続的成長をサポートしている。自身が蓄積した人材育成の経験に加え、グロービス経営大学院や経営教育研究所、ベンチャーキャピタルなどグループの諸機能をフルに生かしてリアルなビジネスの知見を集約。これらによって質の高いプロフェッショナルサービスを提供するとともに、顧客企業の悩みに真摯に添う姿勢を信条とし、共に課題解決に取り組む存在であることを目指している。


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