気まぐれにプリンアラモード、それともひと筋にキムチ?郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2008年06月12日 21時34分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

女はキムチひと筋

 男のプリンアラモードと対照的なのは、女の“キムチひと筋”。

 ペ・ヨンジュンさん狂想曲である。2008年5月30日、関西空港に2年ぶりに来日した韓流スターの到着を待って、なんと1000名ものオバサマ方が空港ロビーで徹夜した。到着時刻にはオバサマは3000人にふくれあがり、警備員も400名近く動員された。

 アシアナ航空から降り立ったヨン様が、入国ゲートから黒のジャケットにジーパン姿で表れると、旅客機の着陸のような、地鳴りの如き歓声と悲鳴で空港が揺れた。ヨン様人気が衰えたと思っていたのは男だけだった。オバサマのファン心理はキムチを漬ける壷の底で、フツフツと発酵し続けていたのだ。

キムチの壷(ハンアリ)。Wikipedia「キムチ」より

 2年間も漬けたら生キムチは腐りそうなものだが、腐らずに待つのが女性心理。唐辛子のような熱い想いをじっと1人に沈殿させることは、プリンアラモード好きの男にはとても真似できない。48人のユニットと1人の韓流、そこからフトひらめいたのが、小学校で習った算数のアレだった。

男は公倍数、女は公約数

 男の心には“公倍数”があり、女の心には“公約数”がある。

 公倍数とは2つの数字に共通する倍数。男の“好き”には、あれも好きになれば、これも好きになるという“好きの掛け算心理”がある。倍数のようにどんどん拡張する。コレクターに男が多いのは偶然ではない。

 公約数とは2つの数字に共通する約数、割り切れる数だ。女の“好き”は、それだけを好きにツボにはまる“好きの割り算心理”がある。自分と相手の約数が“1”になるまで、じわじわ絞り込んでゆく。幼少からのぬいぐるみをずっと愛でるのが女である。

 男は世界中の女を欲しいと思い、女は1人の男を制覇したいと願う。男は浮気をし、女は男を縛るワケである。

 だから男は「君のすべてが好きなんだ!」と愛を広げる。女は「わたしのどこが好きなの?」と絞りこんでくる。男が恋文を捨てられないのは、広げた恋をたたむのに時間がかかるから。女がスパッと断ち切れるのは、最初からたたんでいるからだ。

 48人の追っかけか、1人の追っかけか。その違いから商品を見ると、“商品の性別”がくっきりと見えてくる。

商品には性別がある

 鉄っちゃんと言えば男。鉄道ファンは日本全国の網羅性があり、電車なら津々浦々どこまでも追いかけて、好きをどんどん連結する。“鉄”はまさに男商品。同じ鉄を使うのでも、女は自分を線路に乗せ、旅という体験の上で自分を追い求める。女はレールの上の自分の体験を主役に据える。“旅”は女商品である。

 バッグで比較してみよう。女モノのバッグはポケットが少ない。それは化粧道具など出し入れする“分身バッグ”があるから。女のバッグは“自分パーツ容れ”である。逆に男モノのバッグはポケット数を競う。整理をするための道具容れが基本。バッグにも“男品(おとこじな)”と“女品(おんなじな)”がある。だが、最近トートバッグを使う男が増えてきたのはなぜだろうか。

女性専用機能ではなく、男品と女品の“感性融合ポイント”を探すことが重要

 今どきは商品開発もデザインも“女の世界観”がテーマだ。機能よりもテイスト。ロジックより直感。盛りだくさんより絞り込み。マスブランドよりコアブランド。女品が売れる。

 ただ男目線の“女性専用商品”はダメだ。女性仕様のミラーや化粧ボックスを付けた軽自動車がさっぱりだったのは、“女性仕様=女性向きの機能を付ける”という男目線の開発だったから。女性専用機能ではなく、男品と女品の“感性融合ポイント”を探すことが必要なのだ。

両性具有のマーケティングへ

 だから課題はこうだ。“男と女がいかに交じりあうか”。うふふな交じらいだけでなく、女性の世界観を商品にいかに取り入れるか。

 理想的なのは“両性具有”。女もすなるネイルケアを、男もすなる時代である(参照記事)。消費のジェンダー境界線は消滅しつつあるのだから、開発者もジェンダーを捨てないとダメだ。女性の商品開発者に男モノを、男性の商品開発者に女モノを開発させて境界線を波立たせるのもいい。

 最後にひと言。男が忘れてはならないのは“1人”を追うこと。どうもこれは課題というより“原罪”なのかもしれないのだが。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.