日本列島の南、約137万人の人々が暮らす沖縄。ここは日本で最も電子マネー「Edy」が使われている地域である。老若男女の多くの人々が、まるで現金を使うような気軽さでEdyを使い、街にはEdyのシンボルマークと“シャリーン”という決済音があふれている。
2007年4月、本誌では沖縄のEdy事情について詳しくレポートした。あれから1年余りたった今、沖縄におけるEdyはどのような状況にあるのだろうか。今回の時事日想は特別編として、Edyアイランド・沖縄の今をレポートしたい。
2008年9月の段階で、沖縄は人口当たりのEdy加盟店数が全国1位、そして取扱高も全国で1位である。実際、街中から国道沿いまで、Edyマークをよく見かける。初めて沖縄を訪れた人は、まずそのEdy加盟店の多さに驚くはずだ。
現在、沖縄のEdy加盟店数は約4000店舗。利用率も高く、月間取り扱い件数は約134万件である。これは1日あたり約4万3000件、1分間に約30件の利用がある状況だという。
「利用額も着々と上がってきています。電子マネーというと、小額決済のみというイメージが強いですが、沖縄のEdyについてはそれが当てはまりません。
スーパーやドラッグストアの取り扱い件数が増えたこともあり、数千円の決済でもEdyは普通に使われるようになりました。さらに高額決済でもEdyが使いたいという(ユーザーの)ニーズも現れていまして、沖縄では旅行代理店4社が加盟店に参加。そこでは(1回あたり)数万円から数十万円のEdy決済が行われています」(ビットワレット営業統括部沖縄営業所長の小暮雅夫氏)
1000円以下の小額決済から、数千円の中額決済へ。これはプリペイド電子マネー、FeliCaクレジットいずれの決済事業者にとっても悲願だったが、沖縄のEdyはそのハードルを楽々とクリア。本来はクレジットカードの領域と見られていた、1万円以上の決済でも使われるようになっているという。にわかには信じがたい話だが、その背景には「沖縄県民のクレジットカード嫌いがある」(小暮氏)という。クレジットカードを使わずに、キャッシュレスの利便性やポイントの魅力を受けるためにEdyが使われている、という構図だ。
「だから、沖縄のEdyユーザーは『Edyカードへの現金チャージ』が基本的な利用スタイルです。なかでも全日本空輸(ANA)のANAマイレージクラブのEdyカードが多いですが、クレジットカード型は少数派ですね。また、クレジットカードからのチャージは嫌忌されていますので、おサイフケータイ(モバイルEdy)の利用も少ない」(小暮氏)
ビットワレットではこのような地域特性をすばやく読み取り、おサイフケータイの利用促進をする代わりに「現金からのチャージ環境」を積極的に構築した。現金チャージ機の配備やレジでのチャージができる場所を増やすことで、「Edyユーザーが、(店内で)気軽にチャージして使うことができる」(小暮氏)ように腐心している。沖縄県内には現在700カ所にEdyチャージ拠点が整備されており、地元銀行内にもEdyの現金チャージ機が設置されている。
実際、レジの隣や近くに現金チャージ機がある加盟店が多く、“Edyをチャージしてから、すぐ使う”というユーザーの利用シーンに取材中何度も遭遇した。Edyのチャージ限度額は5万円だが、このような利用環境整備が進められた結果、「数十万円のお買い物でも、現金チャージと決済を何度か繰り返してお使いいただいている」(小暮氏)。ちなみに過去最高の利用額では、約150万円の旅行商品の購入でEdyが使われたことがあるという。
「また、2008年に入っての大きな利用活性化要因としては、県内大手のスーパーである『サンエー』でのEdy導入があります。沖縄では以前から『リウボウストア』でEdyが採用されていましたが、サンエーの導入によって“県民の台所”の大半で(Edyが)利用できるようになりました。これは主婦層を中心とした利用活性化につながり、利用率および平均利用額の向上に大きく寄与しています」(小暮氏)
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