誠 えっ? どうしてそれを知ってるの?
美咲 だって、報告会の直後に小石川社長が人事部長と部屋に残って話しているのが偶然聞こえてしまって。「今度中村君をI2プロジェクト推進室の特命係長にするつもりだ」って、そうおっしゃってましたよ。
誠 そういうことだったのか……。
たわいない美咲との会話から思わぬ情報を聞き出してしまい、誠の頭の中に、“困難”の2文字がまたしてもぐるぐると回りはじめた。
誠 僕はいったい、どういう仕事で会社に貢献したいんだろう。以前、師匠が言っていたように、僕は本当にコンサルタント職に向いているのだろうか?
東山 そこの二人、いつまでそこにいるつもりなんだ?もうすぐ乾杯するから、こっちにグラスを取りにきなさい。
誠&美咲 すみませーん。
美咲と一緒にグラスを取りにいった誠の胸中には、漠然とではあったがある1つの決断があった。
誠 今回のプロジェクトは、僕がリーダーとして成長するための大きな足がかりとなったし、これからもっと多くのプロジェクトを経験してみたい。そのためには……。
その決断を胸に、誠は社長の真意を直接確かめようと小石川たちのいる方に向かってまっすぐに歩いていったのだった。(終)
プロジェクトをきちんと終わらせるために、リーダーがやるべきことには、次の3段階があります。
まず、プロジェクトの終了を内外に明確にすることです。そのためには「どの時点をもってプロジェクトチームから手離れするか」を合意し、周囲の理解を得る必要があります。その上でプロジェクトを現場へ引き継ぎます。
本文中でも紹介したとおり、プロジェクトで決まった仕事のルールややり方は、現場で継続して実施されてこそ、現実の成果を生み出します。どんなにいいアイディアでも、実際に使われないままお蔵入りになってしまってはもったいないですし、リーダーとしてはとても残念に思うことでしょう。
次にプロジェクトオーナーやチームメンバーといった活動関係者の意見集約や貢献評価を行うことになります。当初のオーナーの期待に対してどこまで応えられたのか、またチームとしての強みや反省点は何だったかをとりまとめる反省会を開くことが有効です。
仮にプロジェクトが失敗に終わってしまった場合でも、うやむやには終わらせずに反省会を開いた上で、きちんとけじめをつけましょう。もちろん失敗はしたくてするわけではありませんが、「失敗を成功の母」として失敗体験から学ぶ姿勢を持つことが、リーダーとしてのさらなる成長機会をもたらすはずです。
上記の2段階を踏まえた上で、プロジェクト活動中に自分たちで考えた有用な仮説や分析結果などの取捨選択を行い、後々知見として活用できるように整理して社内に共有しましょう。プロジェクトから得たさまざまな知見を個人個人の属人的な暗黙知(※)だけに留めず、今後の自分たちの業務に生かせるように展開していく必要があります。
リーダーとしてプロジェクトの成果を社内に定着させるという責任を果たすためにも、単に終わらせるだけではなく、次のプロジェクトに生かせる仕組みを作っていくことも大切なことです。
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