現場に一番近い社長でありたい――豊田章男氏のトヨタ社長内定会見を(ほぼ)完全収録(2/4 ページ)

» 2009年01月21日 09時20分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

若い力で改革を

 東京で会見が行われたのは、1月20日の18時半から。会見の情報が流れたのは昼過ぎだったにも関わらず、文京区の東京ドーム近くにあるトヨタ自動車東京本社には100人を超える報道陣が集まった。会見後の質疑応答では、苦境に陥っている自動車産業の未来について多くの質問が寄せられた。

会見に集まった報道陣

――豊田副社長は早くから社長候補と言われてきましたが、厳しい経営環境の中で本当に今昇格の時期なのか見極める動きもあったと聞いております。そういった中で昇格を決断された理由、また決めた時期を教えてください。

 船出で例えますと外は相当な暴風雨、嵐ですから、こういう時期に新しいチームを組むことにつきましては若干考えるところはありました。しかし、今回の100年に1度の不況というものは、そう簡単に1年経ったら晴天に戻るというものではない。やっぱりいろいろこの際、「若い力で思い切って改革してもらうのがいいな」というわけで決めたわけであります。

 いつ決めたか。最終的には本日の午前中に臨時取締役会を開きまして、そこで決めたのでございますが、本人には数日前に「そういうことがあっても心の準備をしておくように」というようなことは申し上げておりました。

――4年前の渡辺社長の内定発表などと比べて、今回は社長内定の発表時期が早まった理由、合わせて副社長人事なども一緒に示されなかった理由は?

 「何でこの時期か」というのは明白でして、私の時や渡辺社長の時に比べると、皆様方のご関心がすごく強い。(関心が)何十倍もあった、いろいろ記事も出てきた。「これは早く決めたほうがいいな」と思ったわけです。

 副社長人事、それからまたそのほかの役員人事、これはグループの中でもいろいろと人事が絡んでまいりますので、すぐには決めきれない。決まり次第、またそれぞれご報告したい。今しばらくお時間をいただきたいと思います。

――渡辺社長が在任4年間で手ごたえを感じられた改革、および足元の業績が大幅赤字に転落見通しなのですが、何か反省すべきものがあればどう振り返られますか?

渡辺 先ほども申し上げましたように、私にとりましては「あっという間の4年間」という感じで、まだ現在大変大きな課題を抱えておりますから、振り返る余裕はないのですが、いろんなことがありました。大きな成長期でもあったし、その成長期を支えてどう運営していくか、あるいはその中で品質の問題だとか、あるいは海外展開だとかさまざまな課題がありましたから、そういう課題に的確に対応することに明け暮れた4年だったと思っております。

 今まさに激動期でありますので、これはわれわれの危機でもあるわけですから、この難局を乗り越えるためには「今までの経験だけでは多分だめだろう」という風に思います。新しい発想や新しい視点、あるいは思い切った行動力という意味で、張会長も言っておりましたし、豊田副社長もお話しましたように「大胆な改革がやっぱり必要な時期である」と思っております。そういう時期に創業の精神をしっかりと認識しており、今申し上げましたような発想、行動力(がある)という意味で「豊田副社長が最適任」という気持ちでバトンタッチすることを考えております。

 後はしっかりと新体制をどうサポートしていくか、もちろん任期中のことは当然やりますが、新体制をどうサポートしていくかということを、張会長ともどもしっかりとやっていきたいと思っております。

――歴代社長を経験された方は、退任後に会長に就くケースが続いてきたかと思うのですが、今回渡辺社長が副会長に就かれることはどういった意味合いがあるのか? 張会長と渡辺副会長との役割分担はどのようになるのか?

 過去においても豊田達郎社長が社長から副会長になっておりますし、それから私も社長から副会長になったということで、初めてのことではございません。

 「どういう役割分担でやるか」ということはまだ具体的に話し合っていませんが、「外の仕事はできるだけ渡辺社長にやってもらいたいな」と私は思っています。先ほど豊田副社長が申し上げましたように、「できるだけ現場に近い社長でいたい」という気持ちはぜひかなえさせるように、私たち2人が一生懸命外回りして、「現場にしょっちゅう行ってもらうことができればいいな」と今私はそう感じております。

――会長、副会長、社長の役割分担ということですが、この体制はどれくらい続くのでしょうか?

 まだ今、答えを決めておりません。と申しますのは、こんな時期でございますので、「まだ景気は底を打っていない」と思っていますから、しばらく(様子を)見てから、あるいはこれ(新体制)が6月以降スタートしましてから決めていくことになります。その時期にはどれくらいか伝えたい。

――(豊田章男副社長が)社長になられるということで、(豊田章一郎)名誉会長にはどういった形でご報告されたのか教えてください。

 一応こういう(人事)案を作りまして、名誉会長と奥田相談役にはご意見を聞きました。2人とも賛成してくださった。

豊田 (私の方からは)まだ報告はしておりません。

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