世間(社内)の側でも「あの人、誰が採ったの」という問題意識とともに、転職してきた社員を眺める。
これは外資系の会社でも同様だし、こうしたインフォーマルな親分子分の関係は、日系の会社に転職する場合よりも重要かもしれない。それ自体はあまりいいことではないが、外資系企業では、俗に「ポリティックス」と呼ぶ、社内の駆け引きが激しい場合が多い。勢力争いに敗れると雇用自体が危なくなることもあって、誰が敵なのか、味方なのか、という区別に社内が敏感な場合がしばしばある。
全般にドライだと思われることの多い外資系企業だが、「転職の親」を裏切るような人物は、信用できない人物として警戒される。社内ポリティックスが重要である以上、機を見て、主流派に付きたいと思う人がいてもおかしくないが、あまり露骨にやると、外資でも軽蔑される。外資系企業の対人関係は、しばしば日系の企業よりも濃密だ。
人間には自分のためにと思うと遠慮が出るが、誰か大切な他人のためだと思うと心おきなく力を発揮できるような心理がある。転職の際に「転職の親」から受けた恩に十分報いようと頑張る心理に転用できるなら、新しい職場の誰かに「義理」や「仁義」を感じるのも、悪いことではない。
転職者は1度会社を辞めているわけだし、新しい職場では新参者なので、自分が所属する会社(ヤクザ映画でいうと「組」)に対してプライドを持つわけではない。転職者がプライドを持つのは、自分の「仕事」であり、その「腕」だろう。ある意味では、職人さんのようなプライドの持ち方だ。
義理に縛られ、職人気質というと、ずいぶん古風に聞こえるかもしれないが、転職者も人の子なので、義理と人情の世界の中で生きている。
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