4人の編集長が語る「ネット化が進むビジネス誌の現状、そして明日は?」(2/4 ページ)

» 2009年03月01日 00時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

人気が集まる記事は?

――具体的にどんな記事に人気があるのか教えていただけますか?

吉岡 Business Media 誠の売りの1つがロングインタビューです。ある仕事についてのプロフェッショナルを取り上げ、どんな仕事をしているのか、またその人の人生を振り返ってもらうというインタビュー連載があるのです。ただ非常に長い記事で、紙媒体で掲載すると数十ページにもなってしまうような分量でした。できるだけカットしないで、ほぼそのままの発言を載せられるというのはWebならではの利点かなと思います。最近では、南極越冬隊の調理人のインタビューがよく読まれました。

 また経済評論家の勝間和代さんや、投資教育にたずさわる内藤忍さんにロングインタビューをお願いして、その中で新刊のコンセプトについて詳しく話していただいた記事などは、とても人気があります。

ダイヤモンド・オンライン

麻生 ダイヤモンド・オンラインが取り扱う情報のジャンルはオンからオフまで多岐にわたるわけですが、最近の特徴というか、特に9月のリーマンブラザースの経営破綻以降の特徴は、ハードコアな記事にかなりのアクセスが集まっていることです。例えば、2008年10月に「中国・ダボス会議の光と影」という連載を掲載したら、その内の1本ではページビューが80万を超えました。

 また動画コンテンツも配信しています。元米財務長官のローレンス・サマーズさんが設立にかかわった政策討論サイト「Big Think(ビッグシンク)」からコンテンツを提供してもらって、投資家のジョージ・ソロスさんノーベル賞経済学者のロバート・マートンさんらの動画を掲載しているのですが、こういうのも専門家の間では結構人気があります。

 またBusiness Media 誠でも書いてらっしゃいますが、経済評論家の山崎元さんの連載は人気がありますね。山崎さんはマネー関連で有名な方なのですが、ダイヤモンド・オンラインの連載ではいろいろな話題について書いているのです。相撲のことや、児童ポルノ規制のことを語ったこともあります。サイト内アクセスランキングではよく1位になっています。

 それからもちろん、男女の問題働き方に関する連載は根強い人気があり、毎回たくさんのアクセスが来ます。

丸山 東洋経済オンラインでは、当社の記者が書いた企業情報のような記事をメインに掲載しています。「流通界の新王者・ユニクロ、フリースを超えた! ヒートテック革命の衝撃」「崖っ縁のソニー、立ちすくむエレクトロニクスの巨人」のように時節柄話題になった事象を追った記事は非常に人気がありますね。

 ちょっと意外なのは、就職の人気ランキング大学のランキングのようにランキングの記事の人気が高いのですね。掲載した時に人気があるだけでなく、その後も安定的にページビューを稼いでくれるのです。時事ネタの記事だとその時は読まれても、新しい情報が出てくるとそっちに移ってしまいますから。

 また、これは当社ならではと思うのですが、ある分野にマニアックに突っ込んでいる記者が以前に書いた記事が突然ページビューが伸びるということがあります。例えばサブプライムローン問題が深刻化する前から、当時であれば金融マニアしか知らないような情報を書いた記事をコツコツ掲載していたのですが、それが何かあった時に参照されるということがあるようです。

麻生 社長インタビューなどだと半年以上前の記事でも、Yahoo!ニュースが最新ニュースの関連記事に入れてくれたりするので、「どうして今これなんだろう?」という記事に突然アクセスが集まることがありますね。それは確かに丸山さんがおっしゃるように、ある分野に特化した記事ですね。産業に特化したり、企業に特化していたりというような。

中嶋  プレジデントロイターでは、「社長の仕事術」「達人のテクニック」「部課長の基本」といったコーナーが「誠」の読者にも多いという若手ビジネスパーソンには特にお勧めです。このあたりはプレジデント本誌がもっとも得意とする分野です。“歴史に強い”プレジデントならではの記事もあります。例えば「部課長の基本」のコーナーでは「『三国志』の曹操が、なぜ『専務止まり』だったのか」といったユニークな切り口の読み物もあるんです。このあたりを読んで、「歴史好きの上司」とコミュニケーションする時にお役立ちのプチ・ウンチクを仕入れていただければと。

 先ほど丸山さんからランキングのお話が出ましたが、プレジデントロイターでは「禁断のランキング」という怖い名前のコーナーがあって、ここでは「結婚したい男の勤め先、したくない勤め先学歴別」といったランキングも取り上げています。Webで反響があったものは、雑誌で定番化していこうという流れもあります。

 プレジデントの場合、本誌では経営論や仕事術、マネー術など含め、じっくり読ませる記事の評価が高いのですが、Webだとやや軽めの記事が読まれるようですね。最近では「トレンド発掘隊」というコーナーの「男性用ブラ」の記事がにぎわっていました。少し前には、吉野家で牛丼をすくうおたまの穴の数から会計学を学ぶという記事を掲載したところ、雑誌で掲載した時以上に大きな反響がありました。

吉岡 もしかすると、当たる記事の傾向が誠と似ているかもしれません。誠でも「ラーメン屋とカレー屋ではどちらがもうかるか」といった記事が非常に人気を集めていました。吉野家やラーメンなど身近な切り口から入って、読んでいくとためになる、という記事は非常に人気があるな、という実感があります。本当は「ハードな記事が受けるようになりたい」とは思っているのですが。

麻生 ダイヤモンド・オンラインもハードな記事が多いと言いながら、ハードなストレートニュースはやっていません。それだと丸山さんがおっしゃったように、バックナンバーで読んでもらえるものではないので。古い記事であっても、しっかりと分析してあったり、当事者が語っていたりすると強いですね。FRBの元副議長のインタビュー日産自動車のカルロス・ゴーン社長のインタビューを掲載していると、忘れたころにたくさんのアクセスが来たりします。

 うつ病のようなテーマを扱った記事だとまた違った形でアクセスが集まります。「派遣村騒動で「心の病」を持つ会社員の復職が続出」という記事をYahoo!ニュースさんに配信させていただいたら、関連記事で張った過去のうつ病関連の記事群にも100万を超えるアクセスが来ました。

吉岡 誠でも同じ理由でサイト内アクセスランキングがうつだらけになったことがあります。1位うつ、2位うつ、3位うつという風に。

中嶋 プレジデントロイターではサイト内アクセスランキングの1位から5位までを吉野家の記事が独占したことがありました。うちは牛丼サイトかと(笑)

丸山 東洋経済オンラインでは、今のところ外部フィードは積極的にはやっていません。むしろ東洋経済オンライン用に作っている記事を朝日新聞さんに提供するという感じになっています。提供した記事は朝日新聞さんの中だけで完結するので、うちにお客が来るということにはならないですね。

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