それにしても壮絶な現場に出向く日々は、精神的にも非常にしんどいのではないだろうか?「確かに死臭などはキツイですが、それでも3日もすれば慣れるものです。むしろ誰もやりたがらない業務内容だけに、ものすごく感謝されるんですよ」と穏やかに微笑む。
「遺品整理業者と聞くと、アンダーグラウンドな怖い人間をイメージされる方が多いようで(苦笑)、皆さん身構えたところがあるようです。しかしそこに、きちんとスーツを着ておうかがいして、丁重にお見積もりをさせていただくものですから、とても驚かれるのです。そして実際、作業をさせていただくと、一様に『まさか、そこまでしてくれるとは思わなかった』と言って感激してくださるのです。そうなると、こっちまでうれしくなって、どうすればもっと喜んでくださるだろうと考えるようになるのです」と笑う。
話題となることも多いキーパーズだが、スタッフになるための要件とは何なのだろうか?
「スタッフになろうという人は今はほとんどの場合『読者』なので(笑)、理念の面では共有できているのですが、それに加えて次の2点が大切です。
第1に見積もりができること。第2に現場のリーダーが務まることです。もちろん、ボランティア精神も大切ですが、それは全体の5〜10%あればよく、残りの90〜95%はやはり、ちゃんと利益を出していく力があることが重要です。現在、弊社では、20代後半から40代半ばまでのスタッフが20人いて、現場にはその内の12〜13人が行きますが、水商売などの経験のある人は強いと感じますね。現場でのコミュニケーション能力の高さは重要ですから」
ところで、現場で遺品と向き合う時は、どんな視点からどのように接するのだろうか?
「まず、遺品は決してゴミなどではないということです。故人が大切にし、気に入っていたものですから。遺品を見ることで、自分のこれからの人生に役立つこともあります。特に孤独死の場合など、こういう人生を送ってはいけないなあ……などと痛切に感じます。
私は、遺品を、基本的に、遺族の立場、遺品整理屋の立場、故人の立場という3つの視点で見ています。当初は、遺族の困り事の相談に乗る形でやっていたので遺族の立場を優先していましたが、次第に、死んだ人の気持ちを考えて、その『思い』をくむようになっていきました。そういう意味で、現在は、故人の立場を優先していますね」
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