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» 2009年11月02日 08時00分 公開

DVDからブランドバッグまで……付録付き雑誌が増えている理由出版&新聞ビジネスの明日を考える(3/7 ページ)

[長浜淳之介,Business Media 誠]

雑誌の商品としての確立を目指したマーケティング会議

 また、宝島社は2007年に付録も含めた全ファッション誌をマーケティングの視点から見直し、これまで書店やコンビニの雑誌棚まで足を運ばなかった人たちを、付録によって読者に取り込む試みを始めた。縮小する雑誌マーケットを競合誌と取り合っても消耗戦になるだけ、と判断しての方針転換である。

 宝島社のファッション誌のマーケティング重視姿勢を象徴するのが「固定された定価がない」ことだ。例えば、前号で780円だった雑誌が、今回は650円、次号は730円と変動していく。ほぼ130円のレンジで毎号変動するのだ。

 これは蓮見清一社長のほか、各部署の責任者が集まるマーケティング会議を雑誌ごとに毎月開き、雑誌の価格を決めている。得てしてこの種の会議は、編集長や編集部員に販売不振の責を問う“吊るし上げ会議”、もしくは編集部を上部からコントロールする“メタ編集会議”になりがちだ。

 ところが同社の場合は、編集内容には口出しせずに「どうすれば1号1号の雑誌を商品として確立させて、もっと多くの読者を獲得できるか」をテーマに運営されるというのだ。マーケティング会議の議題となるのは「定価」「部数」「どういった付録を付けるのがベストか」「表紙の作り方」などで、各誌ともカテゴリーの中での一番誌を目指した。マーケティング会議を開催するアイデアの背景には、今後も雑誌全般の売れ行きの落ち込みが予想される中、一番誌にならなければ広告も入らなくなる危機感があったからだ。

 また、マーケティングの一環として、編集、販売、宣伝、広報が合同で、取次や書店の担当者を招いて、印刷工場や各誌が取り扱うブランドショップを巡るツアーを開き、編集の考え方を知ってもらう企画も順次行っている。

 こうした「一番誌戦略」の結果、女性誌の「28歳、一生“女の子”宣言!」をテーマにした『sweet』(発行部数約70万部)、「30代女子」をテーマにした『InRed』(同約50万部)、「ナチュラルにかわいく」をテーマにした『spring』(同約50万部)、「ボーイッシュがおしゃれ」をテーマにした『mini』(同約20万部)、20代OL向け『steady.』(同約20万部)、ハイティーン向け『CUTiE』(同約20万部)、男性誌『smart』(同約30万部)は、それぞれ各カテゴリーの一番誌に成長したという。

宝島社前に掲げられている女性誌の部数

 特に『sweet』は2007年春には約20万部の発行部数であったのが、2年半で3.5倍も伸びて、現状女性誌では最大部数となっている。そればかりか、『InRed』『spring』も過去最多部数を更新し続けており、この3誌で女性誌の部数トップ3を独占する時もある。雑誌不振の中で驚異的な成功であると言えるだろう。長々と記述したように、付録のみで成功したわけでは決してないが、付録の効果も絶大だったことがうかがえる。

 2005年から手掛けている付録付きのブランドムックも、1000円前後の価格帯を中心に毎回ほぼ完売するほど好調で、既に100点以上を数える。最も売れた今夏出したトートバッグ(手提げ鞄)2個付きの「Cher(シェル)」ムック第3弾『Cher 09〜10 AUTUMN/WINTER COLLECTION』は約70万部を売った。また、11月7日発売のコスメティックブランド「イヴ・サンローラン・ボーテ」のムックは、同社としては過去最高の初版100万部で臨む。

 「読者にしてみれば、付録がブランドショップでは買えない限定品だというのも魅力になっています。最近はブランドの方から『お客さんを増やすためのPRツールとして活用したい』というオファーも多いですよ」とは前出の桜田氏。

 日本の雑誌流通は、世界一と言われるほど整備されたシステムで、これを使えば全国津々浦々の書店、コンビニで商品を宣伝することができる。だからこそ、雑誌の付録は自社製品の拡販を目指すブランドにとっては、重視すべき宣伝ツールになっているのだろう。

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