DVDからブランドバッグまで……付録付き雑誌が増えている理由出版&新聞ビジネスの明日を考える(6/7 ページ)

» 2009年11月02日 08時00分 公開
[長浜淳之介,Business Media 誠]

テープで小口止めしたり、ひもで縛った雑誌が売られる理由

 さて、女性誌の付録付き雑誌を宝島社が本格的に展開し始めたのが2004年、成人向け雑誌がDVDを付け出したのも2004年ころ。日本の雑誌の歴史で、2004年は大きな転機になったと考えられる。

 この年、東京都はPTAなどの要請を受けて、「東京都青少年の健全な育成に育成に関する条例施行規則」を改正。同第18条により「成人向け図書を『18禁』と明記し、棚を分別して、ビニール袋で覆うか、伸縮しない材質のひもにより十字掛けまたはたすき掛けにして、未成年が容易に中が見られないようにすべし」との指導をコンビニに行った。つまり、「未成年に見せるべきでないエロ本が、誰でも簡単にコンビニで立ち読みできるのはいかがなものか。分別して見せないようにせよ」ということである。

 それを受けてコンビニを含むFC本部の業界団体、日本フランチャイズチェーン協会はコンビニの雑誌棚の分別を明確化するとともに、日本雑誌協会と中を未成年に見せないための対応を協議。印刷所で機械的に処理が可能な、小口のシール止めで東京都の了承を得たという。料金負担は、出版社が印刷代の一環として負うことになった。

 ところが、印刷所ではコンビニ向けと書店向け、東京都向けと地方向けのような仕分けをして印刷するわけではないので、すべての成人向け図書にシール止めがなされることになった。また、コンビニはチェーン本部の決定事項が全国津々浦々で実行されるので、都内のみならず全国約4万3000店の全コンビニで、分別された陳列が行われるようになった。

 確かに「未成年に有害と目されるアダルト図書を、野放しに普及させて良いのか」という問題はある。しかし、立ち読みして選べなくなった読者の雑誌離れの傾向は強まり、部数の激減を招いた。コンビニの深夜の来店客数も減っていると聞く。そうして立ち読みが禁じられた成人向け雑誌が、売り上げを回復するために思いついた手段がDVDの付録を付けることであった。

 「お店によっては、全部の雑誌をひもで縛っているところもありますね。あれは立ち読みをできないようにして、万引きを防止するためにお店が自主的に行っています。最近は付録付きが増えていますから、陳列する1冊だけひもで縛って、お客さんがそれをレジに持っていくと、ひもで縛っていない雑誌と付録を渡されるお店もありますよ」と日本雑誌協会。つまり、ひもで縛るのはコンビニや書店の自主的な判断だというのである。

 コンビニや書店の一部の店には、成人雑誌がシール止めされたのを機会に、いっそ全部の雑誌をひもで縛って、万引き対策のために中を見せないようにする、という過剰反応もあった。確かに本棚に人がたかっていれば、店員から顧客1人1人の動きは監視しにくく、万引きの温床になる面もあるのだ。

 立ち読み禁止ならば、中を見ずとも購買動機に結びつく付録に活路を見出そうという雑誌社が出てきても不思議はない。女性誌が付録を付け始めた理由の1つには、このような店頭、特にコンビニの動きがあったのである。

 しかし成功した宝島社の場合は、付録にプラスして先述したように、部署横断で検討するマーケティング戦略があった。「良いモノを作りさえすれば売れる」と出版社が信じている限り、表面だけ真似て付録を付けても、最終的にうまくいく確率は低いと思われる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.