DVDからブランドバッグまで……付録付き雑誌が増えている理由出版&新聞ビジネスの明日を考える(7/7 ページ)

» 2009年11月02日 08時00分 公開
[長浜淳之介,Business Media 誠]
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コンビニ限定も登場。付録による販売競争に拍車がかかる

 「今はもう雑誌の売り上げの半分はコンビニだと言われていますから、出版社はコンビニの意向を聞かないといけないのです。コンビニはPOSのシステム上、売上上位1500位までに入れなければ自動的に除外される仕組みになっていますから、そこから滑り落ちないように各社は必死です」(日本雑誌協会)

 ある雑誌社が付録で部数を伸ばせば、対抗上ほかの雑誌社も付けざるを得ない。その結果、店頭に付録付き雑誌が蔓延(まんえん)することになる。

 「付録は今までの作業になかったものですから、編集部はつらいです。コストもかかります。読者は付録目当てで誌面を見ていません。もっと雑誌の中身、誌面の企画で勝負してほしいです」と、日本雑誌協会は付録の競争になっている女性誌の現状を憂(うれ)いた。

 付録目当てに買うものと言えば、かつて大ヒットしたライダーカードの「仮面ライダースナック」(カルビー)、フィギュアの「チョコエッグ」(フルタ製菓)などの食玩が知られるが、もはや女性誌は食玩化している。付録のバッグや文具を入手すれば、雑誌は中も見ないで捨ててしまう人も多いのではないだろうか。

 「雑誌の付録は麻薬のようなもので、付けた号は売れるが、外せば売れなくなってしまう。だからずっと付け続けなければならなくなる」と指摘するのは前出の大坪氏。成人向け雑誌の場合、編集部ではAVメーカーの素材の再編集が主たる仕事になってきており、自ら企画して取材し編集する機能を失いつつある。エロは時代に先んじるケースがしばしばあるが、いずれ多くの雑誌がメーカーの単なる“宣伝媒体”と化してしまわないかと心配になる。

 日本フランチャイズチェーン協会の調べによると、正会員11社の2009年9月におけるコンビニの売り上げは既存店6055億円(前年同月比5.6%減)、全店6548億円(前年同月比2.9%減)。既存店ベースで4カ月、全店でも3カ月連続で前年同月比減が続いている。この秋、付録付きの雑誌がいっそう増えている背景には、このようなコンビニの厳しい情勢も影響しているように思われる。販売減を食い止めようと懸命なのだ。

 ついにはコンビニ限定付録を付ける雑誌も登場した。ぴあが今秋9月に発売した戦国武将ゆかりの地を網羅した旅行ガイドブック『戦国武将ぴあ』と、秋ならでは行楽スポットを紹介する『秋ぴあ』では、セブン-イレブン限定で武将をデザインしたボールペンを付録に付けた。『戦国武将ぴあ』では直江兼続、『秋ぴあ』は織田信長、上杉謙信、伊達政宗の3種類のうち1つが付けられた。

『戦国武将ぴあ』(左)、付録の直江兼続をデザインしたボールペン(右)

 ぴあ広報によると、このような限定的なノベルティの付け方は4〜5年前から時々行っていたそうで、今回がたまたまセブン-イレブンだっただけで、ほかのコンビニ限定も書店限定もありなのだそうだ。しかし、コンビニは自社チェーンだけで売るビール、お茶、菓子、カップ麺、コスメなどを次々に開発して販売しており、チェーン限定品が大好きだ。今後、雑誌の付録は特定チェーンだけで展開して、差別化を図る方向に進むかもしれない。

 また、『秋ぴあ』では1冊に3種類のボールペンのどれかを付けたように、3つとも欲しい人は同じ本を3冊買わせるようなシステムを取っていることも注目される。これは仮面ライダースナックに数種類ある怪人の写真のうちの1枚が入っているため、コレクターが何個も買ったのと同様の効果を期待しているのだろう。

 雑誌の食玩化はどこまで進むのか。今は付録合戦で活況に見えるが、その着地点に雑誌の復興はあるのだろうか。

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