準優勝を勝ち取れたことに胸を張りたい――トヨタのF1撤退会見を(ほぼ)完全収録(3/3 ページ)

» 2009年11月04日 22時01分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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準優勝という結果に胸を張ってほしい

――優勝のチャンスがありながら、なかなか優勝できなかったという今年の結果をどうお考えでしょうか※。また、もし優勝していたならば来期も続けていたということはあるのでしょうか?

※最高位は2位。2009年のコンストラクターズ(チーム成績)は5位。

豊田 私も今年は本当によく頑張ってくれたと思います。シンガポールグランプリと日本グランプリでは準優勝しました。特に日本グランプリは私も応援しにいきましたが、チームワークの勝利だったと思います。「優勝を逃した」というよりは、私は「チーム全体で準優勝というすばらしいものを勝ち取った」と思ったので、チームメンバーに対しては「準優勝に胸を張れ」というようなことを伝えました。

 (ティモ・)グロックさんのああいうこともあったのですが※、第3ドライバーをずっと務めていたTDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)出身の小林可夢偉君が、最後の2戦に出られたことは私は非常に良かったなと思っています。2戦ではありましたが、日本人ドライバーとしてF1で入賞し、立派な戦いをしたと思います。その後、継続してチャンスを与えてあげられないことは大変申しわけないと思いますが、中嶋(一貴)君も含めてまだ若いので、今年までの走りが評価されて、彼らにまたチャンスが来ることをお祈りしたいし、いろんな形で応援していきたいと思っています。

※日本グランプリでトヨタF1チームのレギュラードライバーであるティモ・グロックが負傷したため、ブラジルグランプリ以降は小林可夢偉が代役を務めた。

 優勝したか、しないかで、この(F1撤退という)結果は別に変わらないと思います。私は準優勝で胸を張らせてあげたいと思います。

ハンカチで目頭を押さえる山科専務

――TDPは今後も続けられるのでしょうか? またTDPの卒業生である小林可夢偉選手、中嶋一貴選手を今後も支援される意思はありますか?

山科 TDPは少し縮小しますが、継続します。下のクラスの小さいお子さんをサポートしていくことになると思います。中島君と小林君についてはTMGがドライバー契約などをしていますので、当面は(支援を)継続していくことになると思います。お金の面については少し考えながらやっていきたいと思いますが、ここまで育てた2人ですので(17秒絶句)「できればどこかのチームに乗せてあげたいな」と思っています。

――北米のNASCARへの参戦は継続されるのでしょうか? もしされるというならば、F1はやめて北米は続けるという理由は何なのでしょうか?

豊田 私はいわゆるモータースポーツというものは、すそ野の広い活動だと思っています。その最高位に位置するのがF1だと思います。モータースポーツにかかわっている方々すべてが、最後に目指すのがやはりF1のサーキットなのではないかと思います。

 その中においてそれぞれの地域において、F1への登竜門というような文化みたいなものがあると思います。米国だとNASCAR、南米ではラリー、日本だとGT選手権など、それぞれの地域に根付いているモータースポーツというものがあると理解しています。私たちは今回、モータースポーツ最高峰のF1の撤退を宣言しましたが、各地域におけるモータースポーツは今後も継続していきます。

 「なぜF1をやめて、地域に根ざした形のことはやるんだ」ということですが、ゆとりがあればすべてをやらせていただきますが、「今はすべてをやることが不可能」とこの1年間で判断しました。1年前に「(F1参戦を)継続する」と当社として申し上げたのも、本当に継続するつもりで申し上げていたと思います。1年間本当に努力してきたのですが、この先いろいろ考えますと、こういう決断をせざるをえなかったということです。

――トヨタ自動車はモータースポーツ以外にも野球やバスケットボールなどさまざまな部活をされていますが、F1撤退がほかの部活動に及ぼす影響はありますか?

豊田 今、会社がこういう状況なのですが、運動部には非常に頑張ってもらっています。野球部は都市対抗野球では準優勝をプレゼントしてくれましたし、現在も社会人野球日本選手権に向けて動いています。今週末には女子ソフトボール部が日本一を目指して戦います。フィギュアスケートでは小塚崇彦選手と安藤美姫選手も活躍していますので、彼ら彼女らが活躍できるように、今後も応援していきたいと思っています。

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